神社や神棚などでよく見られるしめ縄ですが、実際に作ったことがある人は少数でしょう。しめ縄にはさまざまな種類があり、作り方も神社によって違います。よく見られる形もありますが、特殊なものもあり、長きに渡り受け継がれてきたものです。この記事ではしめ縄の種類や作り方、方向の意味、取り付け方などについて説明します。
しめ縄とは?
しめ縄はおもに神社の鳥居や拝殿、巨石や巨木、神棚やお正月のしめ飾りなど、さまざまな場所にあります。しめ縄は神様の住む神聖な場所と私たちの住む俗世を隔てたり、境界を示したりする役割や神聖な場所であることを示す役割があります。また邪悪なものが外に出ないようにする結界の役割もあり、古くから日本人の生活と共に存在しました。
しめ縄の形もさまざまで、真ん中が太い「鼓胴型」、同じ太さのしめ縄を真っ直ぐに取り付けた「一文字型」、作り始めが太く、終わりが細い「牛蒡型」や「大根型」、出雲大社などで見られる「大黒締め」、大根型が交差されているものなど神社や地域、由緒によっても違いがあります。
しめ縄の左巻きとは?作り方は?
稲や麻などの材料をねじって縄ができますが、縄を作ることを「縄を綯う(なう)」といいます。昔からしめ縄はおもに「左巻き」で作られており、日常に使用する品々の右巻きとは区別されて来ました。
しめ縄の作り方はかたちや地域によって違いはありますが、稲わらなどを綯うことで作られます。使用される稲わらは米を収穫した後のものよりも、収穫前の青々とした状態のものが使用されたり、専用の田んぼで作った稲が使われたりすることもあります。
まず刈り取った稲わらを「藁選り(わらすぐり)」と言ってきれいなものを選別し、石や木槌で叩いたり、お湯をかけたりして柔らかい状態にし、それを束にして必要な太さまで撚っていきます。さらに数本の束(3本の場合が多い)を最後に左巻きに絡めていきます。
神棚のしめ縄やしめ飾りなど小型のものはひとりでもできますが、神社のしめ縄は大きいため、複数人で行う必要がありますし、出雲大社などの巨大なものはクレーン車などが使用されます。大きくなるほど、手間や労力、関わる人数、長い準備期間がかかることがわかります。
日本一とも言われる出雲大社の大しめ縄では、しめ縄専用の稲の田植えからしめ縄作りが始まります。材料の選別作業も手作業で丁寧に行われ、何本もの中芯のしめ縄をコモで包みます。そしてコモで包まれた2本の巨大な束をクレーン車と大勢の職人たちで撚り合わせていくという「大撚り合わせ」を行い、最後に巨大なしめの子を取り付けるそうです。
神社は左巻きが多数ですが、少数派として右巻きも存在します。左綯いは太陽、火(男性)を表し、右綯いは水(女性)を表すため、祀る神様が男神か女神かによって使い分けられている場合などです。
しめ縄を取り付ける向き
しめ縄を取り付ける際にもルールがあります。しめ縄の多数は古くから日本にある「左上右下」の考え方に従い、神様から見て左側(私たちから向かって右側)に、縄を作り始めた「綯い始め」がくるように取り付けられます。このような取り付け方は全国の神社の9割ほどで見られるといいます。
少数派としてしめ縄の取り付けの向きが逆になる「本左末右」と呼ばれる取り付け方をしている神社もあります。島根県の出雲大社や熊野大社、他にも奈良県の大神神社や愛媛県の大山祇神社も通常とは逆になります。
また、伊勢地方や出雲地方など地域によってしめ縄やしめ飾りの向きが逆になっている地域もありますし、神棚なども太陽の向きに合わせたり、意味を持たせることで反対になる場合もありますので、引越しなどの際には地域の人に聞いたり、しめ縄を観察したりするといいでしょう。
まとめ〜しめ縄は伝統を伝える意味のあるもの〜
しめ縄は昔から日常とは区別された神聖な「左巻き」で作られてきました。しめ縄は職人たちが伝統を守って作り、伝えてきたものであり、神社や地域によってもかなり違いがあります。しめ縄は作る際から取り付けまでさまざまな歴史を含んでいるので、伝統に従って取り付けましょう。