しめ縄やしめ飾りを作ってみたいけれど、複雑な決まりがあって難しそうと思う方もいらっしゃるでしょう。たしかに、伝統や地域による違いはありますが、基本的な決まりを知っておけば応用が可能です。
この記事ではしめ縄の基本的な作り方をお伝えします。決まりを知って神社やご自宅をよりよい空間にしていきましょう。
しめ縄の作り方の決まり「左綯い」
しめ縄の作り方に統一ルールというものはありませんが、一般的なしめ縄は、すべて左綯い(ひだりない)」で作られます。繊維を撚り合わせることを「綯う(なう)」といい、「左綯い」とは、縄を左向きにねじることです。
なぜ左綯いなのかというと、神聖なものと日常を分けるためと考えられます。
昔から蓑(みの)や草履、菅笠(すげがさ)などの日用品は右綯いで作られてきました。
作り慣れた右綯いとは逆にすることで、神様のためにゆっくり心を込めて作る意味もあったのかもしれません。
とはいえ、なかには右綯いのしめ縄も存在します。しめ縄の形は神社や地域によって異なり、作り方も違ってきますので、地域の伝統や神社のしきたりに従って作ることをおすすめします。
神社のしめ縄の作り方
一般的な神社のしめ縄の作り方は以下です。
1、稲わらや麻などの材料の束を湿らせて叩き、柔らかくする。
2、3つの束に分け、うち2つの束をねじりながら撚り合わせる。
3、その縄にもうひとつの束をねじりながら巻き付け、1本の縄が完成。
この作り方をベースに、材料の束の量を調整することで、綯い始めが太く、綯い終わりが細い「牛蒡型」や真ん中が太い「鼓胴型」などになっていくのです。
縄を太くする方法は、3束それぞれをあらかじめ太く作ってから撚り合わせる方法と撚り合わせながら稲わらなどの材料を足していく方法があります。
また、例外もあり、大しめ縄で有名な島根県の出雲大社では、菰(こも)で包んだ2本の大縄を撚り合わせて作ります。
紙垂やしめの子(房)
しめ縄から垂れ下がっている、特殊な裁ち方をした白い紙を「紙垂(しで)」、稲や麻などで作られたものをしめの子または房といいます。
紙垂は、しめ縄につけることで「神聖」や「清浄」な場所であることを表すもので、数や形は神社によって異なり、しめの子は3本、5本、9本など奇数が多く、房がないしめ縄もあります。
また、しめ縄を雲とした場合、紙垂が稲妻、しめの子が雨を表しており、稲作の豊かなみのりを表す説もあるのです。
しめ飾りの作り方
しめ飾りも、飾りがつくことを除けば、基本的には神社の縄の作り方と同じです。
左綯いで作った縄を輪っかにすれば「輪飾り」、縄を太く短く綯い始めと終わりの太さを変えると「牛蒡型」や「大根型」というように、縄で形を作り、縁起物の飾りをつけます。
縁起物の飾りには種類があり、紙垂は清浄さ、稲穂は五穀豊穣、裏白は清廉潔白や長寿、橙は子孫代々の繁栄、南天は難を転じるなどそれぞれ意味を持ちますので、ご自分の願いに合わせて飾るのもよいでしょう。
また、近年ではインテリアとしておしゃれなしめ飾りも数多くありますので、縁起物にこだわらずに飾り付けをすることも可能です。
しめ縄の材料
しめ縄の材料は、稲わらが一般的ですが、大麻(おおあさ)やスゲ、真菰(まこも)、い草、合成繊維などいくつかの種類があります。
稲わらは、弥生時代に稲作が日本に伝わってから、もっとも身近にあった材料であり、稲の豊かなみのりに感謝したり、翌年の豊作を祝って使われていました。
麻は、日本神話の時代から、御幣につけられた布であり、古くから魔除けや穢れを祓い、心穏やかにする力があるとされてきました。お祓いの際に、神主さんが振るものは「大麻(おおぬさ)」と呼ばれ、かつては麻布が使われることが多かったそうです。
スゲは、「菅笠(すげがさ)」で聞いたことがあるかもしれませんが、真菰と同じく水辺に生えている植物で、北海道や東北での利用が多い植物です。
真菰は全国でみられるイネ科の多年草で、筵(むしろ)の材料として使われてきました。
邪気を払う神聖な草とされ、出雲大社のご本殿と水垣の内のしめ縄は真菰で作られているほか、6月1日に行われる「凉殿祭(すずみどのまつり)」において「真菰神事」が行われています。
そして近年、利用が増えているのが合成繊維です。合成繊維のしめ縄は長年交換が不要であるため、氏子によるしめ縄の奉納が難しい神社などで取り入れられています。
まとめ〜しめ縄の基本を知って神社や自宅を良い空間に〜
しめ縄の作り方には、伝統や地域による違いがありますが、基本的な決まりを知っておけば応用が可能です。難しく考えるよりも、神様のために場所を清浄に保つことや、丁寧に心をこめて作り、飾る方が大事なことではないでしょうか。
基本をおさえて、神社やご自宅を心地よい空間にしていきましょう。