しめ縄、御幣、玉串。これらはそれぞれに意味や役割がありますが、いずれも神社や神事にとって大事なものであり、「紙垂(しで)」が使われていることが共通しています。
この記事では、しめ縄や御幣の意味、それらに使われている紙垂、同じく紙垂が使われる玉串について解説します。
しめ縄の意味とかたち
しめ縄は、神様のいる神聖な場所と私たちの住む俗世を隔てる役割があり、神聖な場所とそうでない場所の境界や結界としての意味があります。また、御神木や巨石、御旅所など神様が宿る場所や神様がいらっしゃる依代を表す際にも張られます。
しめ縄には、縄だけというシンプルなものもあれば、「紙垂」や房(しめの子)がついているものもあります。しめ縄と紙垂と房(しめの子)がついている場合、しめ縄は雲、紙垂は稲妻、房(しめの子)は雨を表し、豊かなみのりや五穀豊穣を祈る思いが込められているのです。
御幣の意味と由来
御幣は、木や竹でできた「幣串(へいぐし)」と紙の部分「紙垂(しで)」の2つの部分からなり、幣串の先端に紙垂をはさみ込み一体化したものをいいます。
社殿の奥や神棚などで見たことがある方もいるかもしれませんね。
御幣のもともとの意味は神へ捧げる貴重な品でしたが、時代を経るにしたがって、神様そのものや依代、祓い具へと変化していきました。
御幣の多様な意味
御幣は、もともと神々へ捧げる貴重な品を示す「幣」に尊称の「御」を付けて呼んだものでした。
現在では、社殿の奥や家の神棚に祀る場合には、神が宿るご神体のような役割を持ち、神主が手に持って振り、周辺の穢れを取り除いて清める際に使われる場合は祓い具として用いられています。
御幣につけられている紙垂には、稲妻の力で邪気を払い、神聖な空間を示す意味もある一方で、祓い具として穢れを吸収し清める力があるとされています。
また、御幣に使われる紙垂は白が一般的ですが、金銀や赤青など色付きのものが用いられる場合もあります。
御幣の意味の変化
御幣は神々への捧げ物だったところから、ご神体や祓い具としての役割に変化しました。このような変化はなぜ起こったのでしょうか?歴史を追ってみていきましょう。
古墳時代の頃から、人々は神に貴重な捧げ物をしていました。それらは「幣帛(へいはく)」と呼ばれ、米や酒、塩、魚、武器や農具、鏡、布など、当時の最先端技術を用いた貴重なものでした。
奈良時代後半以降になると、幣帛は特に布をさすようになります。
捧げ方も変化し、折りたたんだ布や「木綿(ゆう)」という木の皮の繊維、「麻」
を「幣挿木(へいはさむき)」にはさんで捧げるようになり、これが現在の御幣のかたちにつながりました。
さらに、布をはさんでいたものから、次第に紙を垂らす形式(「紙垂」のおこり)も見られるようになります。紙も当時では貴重なものだったため、神様に捧げるものとしてふさわしいと考えられていたためでしょう。
室町時代から江戸時代になると、榊(玉串)に加えて、神前に御幣を捧げる形が普及・定着し、紙垂の部分も太くなっていきました。
このように、もとは神に捧げるものであったが、のちに社殿のなかに立てて「神の依代」や「ご神体」として、あるいは「祓具」としても用いられるようになり、現在に至ります。
紙垂とは
ところで、先ほどから何度も登場している「紙垂」ですが、紙垂とは、特殊な裁ち方をして折った紙のことをいい、神聖さや清浄さを表すものです。
紙垂の形は稲妻に似ています。落雷があると稲が育ち豊作になることから、五穀豊穣を願ったり、雷には邪悪なものを祓う力があることから、悪いものを寄せ付けない意味を持ちます。
紙垂の裁ち方には「吉田流」「白川流」「伊勢流」があり、しめ縄につける数も4つ(四垂)が一般的ですが、地域や神社によって異なります。
玉串は神饌と同じ意味
しめ縄や御幣と同じく、紙垂が使われているのが「玉串」です。
榊の枝に麻紐で紙垂を取り付けた、神事に使う植物のことを指し、米や酒、魚、野菜、塩などの神様にお供えする神饌と同じ意味を持ちます。
神事において参列者は「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」といって、玉串を神様にお供えする儀式を行います。玉串が、神様と参列者の仲立ちをしてくれるのです。
まとめ〜しめ縄や御幣、紙垂の意味を知ってお参りしよう〜
紙垂がつけられていることで共通している、しめ縄、御幣、玉串ですが、それぞれに意味や由来があり、現在まで続いていることがわかりました。神様なのか、神饌なのか、祓い具なのかなどそれぞれの意味を知ると、より一層神聖な気持ちで、お参りをしたり、家の神棚を整えたりできそうですね。