鹿島信仰とは、茨城県鹿嶋市にある鹿島神宮を総本社とする信仰で、関係する鹿島神社は茨城県を中心に全国的にもみられるといいます。この記事では、鹿島信仰の祭神や鹿島神宮の見どころ、歴史、民俗行事についてご紹介します。
鹿島信仰の祭神
鹿島信仰の祭神は武甕槌神(たけみかづち)の1柱です。武甕槌神は日本神話で大国主の国譲りの際に活躍する神のこと。天照大神の命を受け、香取神宮の祭神・経津主大神(ふつぬしのみこと)と共に交渉を成就させたといわれています。
武甕槌神は、古代では千葉県の香取神宮と共に朝廷の蝦夷平定の神として重要視され、両神宮の分霊は朝廷の威を示す神として東北沿岸部の各地で祀られています。
また、藤原氏の氏神としても崇敬され、奈良にある春日大社へも勧請されました。
鹿嶋市には藤原氏の祖である中臣鎌足(のちに藤原鎌足)の出生伝承地とされる鎌足神社もあり、関係の深さが伺えますね。
鎌倉時代以降は、武家政権から武神として崇敬され、現在でも道場には「鹿島大明神」と「香取大明神」の掛け軸が対になってかけられているところがあります。
総本社・鹿島神宮の見どころ
鹿島信仰の総本社である鹿島神宮は、東国三社のひとつでもあり、宮中の四方拝でも遥拝されています。創建は紀元前までさかのぼると言われる歴史の古い神社でもあり、境内には由緒のある見どころがたくさんあります。
徳川家からの厚い信仰がうかがえる社殿
鹿島神宮の社殿は2代将軍秀忠、奥宮は徳川家康、楼門は水戸初代藩主徳川頼房より奉納されたもので、いずれも重要文化財に指定されています。
鹿島神宮の例祭
鹿島神宮の例祭は毎年9月1日に行われます。例祭は6年に1度、天皇陛下の御使である勅使が派遣される勅祭となり、さらに12年に1回は水上の祭典である御船祭も行われます。御船祭は、前回平成26年に開催され、次回は令和8年に予定されています。水上の鳥居を
御座船がくぐることで祭がはじまります。
鹿
鹿といえば奈良公園を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は奈良公園の鹿の祖先がこの鹿島神宮の鹿と言われているのです。
鹿島神宮と鹿のつながりは、国譲りの神話において武甕槌神に天照大神の命を伝えにきたのが鹿の神であったことからはじまります。鹿島神宮にも鹿苑があり、現在でも鹿が神様として大切にされています。
奈良公園の鹿との関係は、平城京に春日大社が造営され、鹿島神宮から武甕槌神が勧請された際に、神が鹿に乗って奈良の御蓋山に降り立ったという話から、現在の奈良公園でも鹿が大切にされているのです。
要石
境内には地震にまつわる場所があります。ナマズを抑えている武甕槌神の石碑のさらに奥にいくと、巨石の一部が地上に現れた「要石」が祀られており、この石によって地震が鎮められるといわれています。
御手洗池
1日に40リットルもの水が湧き出すといわれる神秘的な雰囲気の池も人気があります。昔はお参りの前に禊をする場所として使用されていました。
水上の鳥居
鹿島神宮の鳥居は古くは東西南北の4箇所にありましたが、現在では東西南の3基となっています。そのなかでも西の一の鳥居は北浦の湖畔、鰐川の中にあり、美しい朱色が水面に映える景色がみられます。
鹿島神宮の歴史
鹿島神宮の創建は『鹿島宮社列伝記』において、神武天皇元年に宮柱を建てたとあることから、神宮側ではこの年を創建年としています。
大化の改新後、天智天皇のときに社殿が建てられ、その後の蝦夷平定の際にも影響力を持ちました。
奈良時代になると、藤原氏から氏神として崇敬され、神護景雲2(768)年には春日大社に鹿島神宮から武甕槌神が、香取神宮から経津主命が勧請されました。
鎌倉時代以降になると、源頼朝や足利尊氏など歴代の武家政権や大名から崇敬をうけ、源頼朝などから多くの社領が寄せられましたが、在地勢力が神領に入り込むなどの影響を受け経営が厳しくなり、社殿の立て直しができない状態になったといいます。
しかし、江戸時代に入ると鹿島神宮は徳川家からの厚い信仰を受け、社殿などが建てられました。
昭和43年には明治維新後100年記念として、茨城県笠間市の御影石を用いた二の鳥居が建てられましたが、平成23年に起こった東北地方太平洋沖地震により、この二の鳥居と御手洗池の鳥居が倒壊し、境内の石灯籠や千木も被害を受けたといいます。
その後、倒壊した鳥居は境内の杉を用いて再建され、平成26年に竣工祭が執り行われました。
鹿島様・鹿島流し
鹿島信仰との関係が考えられている民俗行事が北関東から東北地方にあり「鹿島様」「鹿島流し」と呼ばれています。
鹿島様はおもに秋田県でみられ、巨大なワラ人形「鹿島様」を村の入口に置き、病退散、家内安全、五穀豊穣を祈願します。
また「鹿島流し」は、紙やわらでできた人形(鹿島様)を舟にのせ川に流すというもので、こちらも五穀豊穣や悪疫退散が祈願されているそうです。
まとめ〜鹿島信仰は時代を超え受け継がれている〜
鹿島信仰は古代より崇敬され、現代までさまざまな形で受け継がれてきました。春日大社との関係や民俗行事など興味深いものがあります。鹿島神宮も見どころがたくさんありますので、機会があれば参拝してみてはいかがでしょうか。