神社の鳥居をくぐると、参道や拝殿の前で一対の狛犬を見つけることも多いでしょう。鋭い目つきで正面を見つめるものもあれば、どこか愛嬌のある表情をしたものもあり、神社によって、そのお姿はさまざまです。
名前に「犬」とついていますが、私たちが普段目にする犬を表した像ではありません。狛犬は、神聖な場所を守る想像上の動物として受け継がれてきた存在です。今回は、狛犬の役割や一対で置かれる理由、しめ縄との関係について紹介します。
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狛犬は邪気を祓い神前を守る存在

狛犬は、邪気を祓い、神前を守護する役割を持つといわれています。参道の途中や拝殿の前など、参拝者が神様のお鎮まりになる場所へ近づく位置に置かれることが多く、境内を見守る存在です。
境内でよく見かけるのは石造の狛犬ですが、すべてが石でできているわけではありません。社殿の内側に安置される古い狛犬には木造のものがあり、ほかにも陶製や金属製の例があります。
石造の狛犬は屋外で長い年月を過ごすため、雨や風によって表面がすり減り、苔がついていることもあります。台座に奉納者の名前や建立された年が刻まれていれば、その神社と地域の人々とのつながりを知る手がかりにもなるでしょう。
一対の狛犬は阿吽を表している
狛犬をよく見ると、一方は口を開け、もう一方は口を閉じているお姿をしていることが一般的です。口を開けた姿を「阿形(あぎょう)」、口を閉じた姿を「吽形(うんぎょう)」と呼び、二体で「阿吽(あうん)」を表します。
「阿」はサンスクリット語の最初の音、「吽」は最後の音に由来するとされ、物事の始まりと終わりを象徴する言葉として捉えられてきました。そのため、一対で向かい合い、互いを補う姿から、息がぴったり合うことを「阿吽の呼吸」と表現するのです。
拝殿に向かって右側に阿形、左側に吽形が置かれることが多いですが、左右が逆のものや、二体とも同じような口の形をしたものもあり、すべての狛犬に共通する決まりではありません。左右だけで判断せず、実際の表情を見比べてみることをおすすめします。
狛犬はもともと獅子との組み合わせ

現在は一対をまとめて「狛犬」と呼ぶのが一般的ですが、本来は獅子と狛犬という異なる二体の組み合わせでした。口を開けた阿形が獅子、口を閉じた吽形が狛犬とされ、古い造形では狛犬の頭に角が表されることもあります。
その起源は、インドで仏陀の威厳を示すためにライオンの姿を表したことにあるといわれています。それが中国や朝鮮半島を経て日本へ伝わり、神聖な場所を守る獣として日本独自の姿へ変化していきました。
当初は宮中や社殿の内側に置かれる木製の像が中心でしたが、後に屋外へ置かれる石造の狛犬が広まりました。各地の石工が手掛けたため、顔つきやたてがみ、尾の形、子どもや玉を抱える姿などに地域や時代の特色が表れています。
狐や牛などが置かれる神社もある

神社の入口を守る動物は、狛犬だけではありません。稲荷神社では狐、天満宮では牛の像を見かけることがあります。これらは単なる飾りではなく、御祭神と深い縁を持つ「神使(しんし)」として大切にされている動物です。
ほかにも、神社によって鹿、猿、狼、うさぎなど、さまざまな動物が見られます。動物の姿から、祀られている神様やその土地に伝わる信仰を知る手がかりになることもあるでしょう。
狐の像をすべて狛犬と呼ぶわけではありませんが、参道の左右に一対で置かれ、神前を守るように見える点はよく似ています。初めて訪れる神社では、どのような動物が迎えてくれるのかにも注目してみてください。
しめ縄を掛けた狛犬も見られる

狛犬の首や胴、台座などに、しめ縄が掛けられている神社もあります。しめ縄は神聖な場所とそれ以外を区切り、清浄な場所であることを示すものです。神前を守る狛犬にしめ縄が掛けられた姿からは、その像が信仰の対象として大切に扱われていることが伝わります。
ただし、狛犬にしめ縄を掛ける意味や位置、交換する時期に全国共通の決まりがあるわけではありません。地域の習わしや祭礼に合わせて掛ける場合もあり、縄の太さや形もさまざまです。
長い間屋外に置かれたしめ縄は、色が薄くなったり、雨や風で形が崩れたりします。新しい縄に交換する際は、狛犬や台座を傷つけないよう、地域や神社で受け継がれてきた方法を確認することが大切です。
まとめ|狛犬は神聖な場所を守る一対の守護獣

狛犬は邪気を祓い、神前を守る存在として、参道や拝殿の前などに置かれています。一見すると同じように見える狛犬も、由緒や表情、姿、素材、置かれ方などはさまざまです。本来は獅子と狛犬の組み合わせであったことや、神社によっては狐や牛などの神使が置かれることを知ると、境内の見方が少し変わるでしょう。
神社を訪れた際は、狛犬の口元や頭の角、台座の文字、しめ縄の有無なども見てみてください。その土地で受け継がれてきた信仰や、奉納した人々の思いを感じられるかもしれません。






