諏訪神社や日枝神社、射水神社など、名の知れた神社も多い富山県。全国では16位と神社の数も多い県です。(https://jpinf.boo.jp/Loli4Buk/Shrine/ShrineLilo16/PrShrnPNo16.html 参考)
この記事では、神社のしめ縄交換や神社が抱えている課題と、富山県内のしめ縄製造業者能登半島地震の影響などをご紹介します。
神社のしめ縄の交換はだれがしているのか
鳥居や拝殿、御神木など神社には大きなしめ縄が取り付けられている箇所が数多くありますが、もっぱらだれが作り、奉納しているのでしょうか。
大きなしめ縄は、多くの場合以下のような方法で奉納されています。
・氏子が作って奉納
・しめ縄製造業者が製造し奉納
・地域の協力隊やその神社の崇敬団体などが作って奉納
事例と共にご紹介します。
氏子が作って奉納
1つ目は、氏子が奉納する方法です。
昔は氏子があつまって、その年に取れた稲わらを使ってしめ縄を作り、年末や例祭の前などに奉納していました。しかし、近年では少子化や高齢化などにより、氏子集団への負担が大きくなり、継続して奉納することが難しい神社もあります。
氏子が作った神社のしめ縄の例(2023年)
・「諏訪市 先宮神社」年1回氏子たちが奉納。
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023112700497
・「伊予豆比古命神社(椿神社)」例祭前に、18本のしめ縄を奉納。
https://neurocentrum29.rssing.com/chan-15484249/article1957.html?nocache=0
・「鈴鹿市椿大神社」氏子がつくる「むすび会」がしめ縄を奉納。
https://www.chunichi.co.jp/article/827431
しめ縄製造業者が製造し奉納
2つ目は、氏子や神社からの発注を受け、しめ縄製造業者が作り、奉納するケースです。
伝統的な稲わらや大麻を使ったしめ縄や近年注目されている合成繊維のしめ縄など、材料によっての違いや、神社用の大きなしめ縄を作る事業者もあれば、お正月用のしめ飾りが専門の事業者もあります。
地域の協力隊や崇敬団体などが作って奉納
3つ目は、地域の協力隊や崇敬団体が奉納する方法です。近年のしめ縄や神社の現状を受け、しめ縄作りの技術の継承や伝統文化を守るために発足した団体もあります。
しめ縄を奉納する団体や崇敬会の例
・出雲大社の大しめ縄は「飯南町注連縄企業組合」が請け負っている
https://ohshimenawa.com/?mode=f6
・射水市放生津八幡宮では「しめ縄協力隊」が発足し奉納
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1114764
・栃木県日光森友瀧尾神社では「日光藁文化保存会」が奉納
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/672600
・三重県伊賀市 熊野三所神社へは「しめ縄作り同好会」が奉納
https://www.iga-younet.co.jp/2023/12/02/84432/
現代の神社やしめ縄の課題
しめ縄作りは本来は、農家の冬の副業でもあり、氏子たちがその年に収穫した稲わらを使って作り、豊作を感謝して奉納。そして新しい年が来ると、しめ縄と共にその年の豊作や繁栄を願ったものでした。
しかし、近年の都市部への人口流入や地方の高齢化によって、神社を維持していくのが難しくなり、しめ縄の奉納どころか存続が危ぶまれている神社も多くなってきています。これは地方の小さな神社ほど厳しい状況であるのです。
また、しめ縄作りというのは、体力も時間も根気も必要な重労働です。高齢化によって、しめ縄作りを続けるのが年々難しくなっているとの声や後継者がおらず、伝統技術が伝えられないまま途絶えてしまう可能性がある地域もあるのです。
富山県内の代表的なしめ縄製造業者
富山県では古くから漁業が盛んで、漁業用の網の製造からしめ縄の製造へと至った製造業者が2社あります。
縄合屋
富山県射水市にある縄合屋。35年間で全国に7000本の納品実績があります。
合成繊維のしめ縄は、ポリエチレン製10年保証の「極(きわみ)シリーズ」とポリプロピレン製3年保証の「匠(たくみ)シリーズ」があり、極シリーズは麻色と黄金色が選べます。
鼓動型しめ縄、牛蒡型しめ縄、左縄などのしめ縄製造の他に、神具の修理や新調も行っています。(幟、旗、幕、鈴、鈴緒、六角、提灯、神鏡、銅器など)
富山県内では、射水市の天神町天満宮や富山市の奥田神社、千里稲荷神社、氷見市の伊勢玉神社など数多くの神社に奉納した実績があります。
折橋商店
同じく富山県射水市にある折橋商店は、明治43年に創業。30年の耐久性を誇る合成繊維のしめ縄を製造しています。しめ縄には10年保証がついており、黄金色のしめ縄は鼓胴型、牛蒡型、一文字型、左縄があります。
折橋商店のしめ縄は、富山市小中神明社や本郷神社、砺波市の熊野神社、氷見市の金田神社、高岡市木町神社などに奉納されています。
こちらの2社は、富山県内の神社にも多くのしめ縄を奉納していますが、そのなかには令和6年1月1日の能登半島地震によって被災した神社もあるといいます。
能登半島地震により富山県内の神社も被害を受けている
能登半島地震によって富山県内の神社でも多くの被害がでており、2月13日の時点で県内では551件の神社に社殿や鳥居、玉垣、石灯籠などの倒壊や破損などの被害が確認されているそうです。
まずは住民の生活再建が優先であるため、神社の復旧はほとんど進んでいない現状があります。神社には大きな鳥居や石灯籠や玉垣など、石でできた建造物が多く、作業が大がかりになるため、壊れた建造物を敷地内にまとめておくという応急処置のみで止まっている神社も多いといいます。
富山県神社庁では、神社の修繕・復旧を進めるための義悁金募集サイトを開設していますが、義捐金や人手も足りておらず、時間がかかると考えられています。
神社は地域のコミュニティの中心にもなる場所。神社の祭りなどを通して、世代を超えて人々がつながれる場所でもあり、被災地の復興とともに、神社の復興も重要なことなのです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000114206.html
まとめ〜しめ縄の伝統を守ることは一筋縄ではいかないけれど〜
しめ縄や神社の伝統を後世に伝えていくことには、大きな壁が立ちはだかっていますが、地域の氏子会とはじめ協力隊など、活動をしている人々がいます。震災で被害を受けた神社も多い富山県の復興を祈るとともに、それぞれが地域の神社を守ることも考えていきたいですね。