神社や神棚でみられるしめ縄。太いものから細いもの、太さに変化があるもの、変わった形をしているものなど多くの違いがみられます。この記事では、日本全国の多様な形のしめ縄をピックアップしてご紹介します。この記事を読むと、あなたの近くにある神社のしめ縄が気になってくるはずですよ。
しめ縄とは?
そもそもしめ縄とは、神様のいらっしゃる神聖な場所やものと私たちの住む俗世界とを区別するためのものです。 縄を張ることで「ここから先は清浄な世界である」という境界を示し、邪気や災厄が入り込むのを防ぐ役割を果たしています。古代から続く日本の祭祀においては、縄を張って区画する「結界」の文化があり、その名残が神社や家庭の神棚に受け継がれているのです。
日本全国のさまざまな形のしめ縄 5選
しめ縄と一口に言っても、地域や神社によって姿は大きく異なります。ここではある程度の分類にわけて、いくつか紹介しましょう。
縄そのものを感じさせる原始的なしめ縄
(千葉県・安房神社 拝殿)
写真のように、縄をたゆませながら取り付けているしめ縄は、全国的によくみられる形です。
縄そのものを渡らせており、正式な呼び方は不明ですが、この記事では原始的な形としています。形や太さ、長さは神社によってまちまちで、縄を張るという目的のために代々受け継がれてきたことがわかります。
大黒締めのしめ縄
(宮崎県・宮地嶽神社)
通常のしめ縄は3本の縄を綯い合わせてつくりますが、大黒締めは、2本の縄を捻りあわせて作るしめ縄です。巨大な大黒締めで有名な神社は島根県の出雲大社や福岡県の宮地嶽神社などが挙げられます。
鼓胴型しめ縄
(北海道・根室金刀比羅神社)
鼓胴型しめ縄とは、真ん中が最も太く、両端が細いしめ縄をいいます。
一般的なしめ縄の形で、多くの神社でみられる形です。
一文字型しめ縄
(京都府・上賀茂神社)
一文字型しめ縄は、端から端まで太さが均一で、まっすぐにつけられているしめ縄をいいます。こちらも一般的にみられるしめ縄ですが、3本の縄を撚り合わせてつくるものが多いなか、写真の上賀茂神社のしめ縄は、縄が編まれており、やや珍しいといえます。
交差型しめ縄
(秋田県・綴子神社)
東北地方など一部の地域にみられるのが、写真のような形です。綯い始めが細く、綯い終わりが太いしめ縄を、2本交差させています。交差型としていますが、同じような形のしめ飾りで
ハサミ型(きっちょん)と呼ばれるものもあるため、名称は定かではありません。
しめ縄の向き
(島根県・出雲大社)
しめ縄を見る際にもうひとつ注目したいところがあります。それはしめ縄の向きです。
この写真は出雲大社のしめ縄ですが、綯い始め(作りはじめ)が、向かって左にきています。しかし、同じ大黒じめでも、前掲の宮地嶽神社のしめ縄は綯い始めが向かって右であり、他のしめ縄も一般的には、向かって右に綯い始めがくることが圧倒的に多いのです。
なぜでしょうか?これは古来からある「左上右下」の考え方が影響しており、神様側の左が、私たちからみると向かって右になるためです。一般的なしめ縄はこの考え方にのっとって飾られています。
しかし、出雲大社では左右の上位が逆になるため、反対になるのです。
なぜしめ縄の形に違いがあるのか?
しめ縄の形や結び方が地域ごとに異なる理由には、いくつかの背景があります。
・地域の信仰や神話
出雲地方では「国譲り神話」と結びつき、力強さを象徴する巨大なしめ縄が作られました。
・自然環境
稲作が盛んな地域では稲わらが豊富に使えますが、寒冷地などでは材料が限られるため形にも工夫が生まれます。
・祭礼や風習
その土地の祭りや祈願内容によって、太さやねじり方、付けられる房の数まで意味が込められています。
つまり、しめ縄の形の違いは「地域の歴史や人々が生きた証」ともいえるのです。
紙垂(しで)や房について
しめ縄に欠かせないのが、白いギザギザの紙「紙垂(しで)」や垂れ下がる房。
紙垂とは、特殊な裁ち方をして折った紙のことをいい、神聖さや清浄さを表すものです。
紙垂の形は稲妻に似ています。落雷があると稲が育ち豊作になることから、五穀豊穣を願ったり、雷には邪悪なものを祓う力があることから、悪いものを寄せ付けない意味を持ちます。
紙垂の裁ち方には「吉田流」「白川流」「伊勢流」があり、しめ縄につける数も4つ(四垂)が一般的ですが、地域や神社によって異なります。
房の意味は明確にはわかっていませんが、装飾的な役割や職人の表現であるといった説もあり、また地域によって、神社によってそれぞれ意味がある場合もあるでしょう。
まとめ|しめ縄は人々が生きた証
普段は何気なく見ているしめ縄ですが、その形には地域の信仰や歴史、自然環境までも映し出されています。旅行先や地元の神社でしめ縄を眺めると、普段とは違った視点で楽しめるはずですよ。