しめ縄としめ飾りの形に込められた意味|祈りを結ぶ日本のかたち

しめ縄_しめ飾り_形_意味

神社や神棚、お正月の玄関飾りに見られる「しめ縄」や「しめ飾り」。その形ひとつひとつに、意味があり、人々の願いが込められています。しめ縄としめ飾りは大きさが違うのはもちろんですが、形も違うと思われがちです。しかし、なかには同じような形のしめ縄としめ飾りがあるものもあります。例えば、中央がふくらんだごぼうじめ、米俵をかたどった俵形、七福神を乗せた宝船など。この記事では、代表的なしめ縄・しめ飾りの形とその意味を、民俗的な背景とともに紹介します。

 

 

しめ縄としめ飾りの関係

 

しめ縄_しめ飾り_関係

 

しめ縄としめ飾りは、どちらも「神聖な空間を示す結界」を表すものです。神社では神域を区切るしめ縄、家庭では年神様を迎えるしめ飾りとして受け継がれました。その本質は神聖な場所を表し、清めること、神に祈ること、感謝することでした。

お正月のしめ飾りは、神社のしめ縄が派生したもので、かつてお正月には家のまわりに縄を張り、邪気を払っていたものが、次第に小型化し、縁起物の飾りをつけるようになりました。地域によって形やつける飾りが異なるのは、地域ごとに自然の恵みや歴史、人々の関心ごとが異なってくるためで、時代を経てこのような特色ある形となっていったのです。

 

基本形|ごぼうじめ・大根じめに見る原点の姿

 

しめ縄_しめ飾り_牛蒡型

 

「ごぼうじめは、わらを一定の太さで綯った最も基本的なしめ縄の形です。中央がやや太く、両端が細くなる傾向があり、この形については、広く“豊かな実りを象徴する”とされてきました。またこの変化あるフォルムには、天地をつなぎ、命の力を示すという伝承もあり、『生命の流れ』という観点で解釈されることもあります。

中央がさらに太く膨らんだものは「大根じめ」と呼ばれ、力強く豊かな実りを願う形として伝えられています。この形は神社の鳥居や神棚、家の門などでも広く見られ、日本各地で受け継がれてきた代表的なしめ縄のひとつです。

このように、ごぼうじめ・大根じめは、縄そのものの力強さを感じさせる形であり、自然と人との関わりを象徴する、素朴で原初的な祈りの姿といえるでしょう。

 

豊かさを祈る形|宝船と俵に込められた願い

宝船

 

しめ飾り_宝船

 

帆掛船に七福神や米俵、千両箱を乗せた宝船は、福を呼び込み、災いを流す「迎福と厄流し」の象徴です。

「お正月に宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると吉夢を見られる」という風習をご存じの方も多いでしょう。実はこの習慣、もともとは節分の行事から発展したもので、自らの厄を船に乗せて流し、新しい年を清らかな心で迎えるという意味がありました。

北海道から九州まで広い地域に伝わる宝船の飾りは、わらで作った俵や松竹梅などの縁起物を組み合わせており、「福を招き、厄を払う」という二重の祈りが込められています。

 

 

しめ縄_俵

 

俵は、米や穀物、塩、炭などを貯蔵・運搬するためのわら袋。食料を守る命の器として、日本人の暮らしを支えてきました。

俵を模したしめ飾りは、山形県など東北地方で多く見られます。寒冷で稲作に厳しい土地だからこそ、豊作を願う気持ちがより強く、その切実な祈りが形となって残りました。

俵形のしめ飾りは、「実り」「備え」「感謝」を表し、豊穣の祈りが込められた形です。

 

厄を祓う形|鋏と前垂れが示す清めの信仰

鋏(はさみ)

 

しめ縄_鋏(はさみ)

 

「鋏」の形をしたしめ縄は珍しいものですが、静岡県御殿場市の神場山神社では古くから奉納されており、御殿場ではこの形を「ぶっちがい」と呼びます。

「切る」という行為には、災厄や悪縁を断ち切る意味があり、鋏形のしめ縄には「悪しきを断ち、良き縁を招く」祈りが込められています。二枚の刃が交わる姿は「決断」「再生」「新たな門出」の象徴でもあり、新年を迎える節目にもふさわしい形といえるでしょう。

また、このような交差形のしめ縄は東北地方でもみられますが、それが鋏をあらわすものなのかは分かっていません。

 

前垂れ

 

しめ縄_前垂れ

 

のれんのようにわらを垂らした「前垂れ」は、しめ飾りの原初的な形です。のれんのようなわらを等間隔に垂らしたもの、ぎっしりと詰めた「板じめ」、束に分けたものなど、地域ごとに多様なのが特徴です。

かつて家の出入口や屋内に縄を張り、垂れをつけて神聖な空間を示したとされます。前垂れは、わらを垂らした原初的なしめ飾りの形で、神域と人の暮らしの境界を示す役割を持ちます。稲わらそのものの力強さを活かしたこの形には、「清め」や「祓い」の意味が込められており、新しい年を迎えるにあたって場を整える象徴とされています。

また、現代のしめ飾りに見られる「房飾り」は、この前垂れの名残ともいわれます。

 

まとめ|形に宿る祈り

 

しめ縄_しめ飾り_形に宿る祈り

 

しめ縄やしめ飾りの形は、地域ごとの信仰や生活の記録でもあります。ごぼうじめは自然への感謝を、宝船や俵は豊かさを、鋏や前垂れは清めと再生を象徴します。それぞれの形が、人々の祈りとともに受け継がれ、今も暮らしの中に息づいているのです。

折橋商店では、こうした伝統の形を大切にしながら、地域の風習や神社の作法に合わせたしめ縄づくりを行っています。形を知ることは、祈りを知ること。しめ縄の姿の中に、日本人の心のかたちを見ることができるでしょう。

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