古くから日本人にとって大事な行事であるお正月。人々は飾りのひとつひとつに意味や願いを込め、お正月をお祝いしてきました。この記事では、神社や神棚のしめ縄の意味、お正月のしめ飾りや門松、鏡餅の意味を解説します。意味を知ることで、よりお正月が楽しめますよ。
しめ縄の意味
神社や神棚にあるしめ縄は、おもに神様のいる神聖な空間と私たちが住む俗世とを隔てる意味があります。また、神様が宿る依代(よりしろ)となる場合や悪いものが清浄な場所に入っていかないようにする結界としての役割もあります。
しめ縄についている白い紙「紙垂(しで)」は、神聖さや清浄さを表すとともに、稲妻の形をしているため、稲妻の力で悪いものを寄せ付けない、かつ稲妻によって稲が育つことから、五穀豊穣の意味もあります。
しめ飾りの意味
しめ飾りは神社や神棚のしめ縄に、縁起物の飾りをつけたことから、しめ飾りと呼ばれるようになりました。しめ飾りは、家が清浄になり、神様をお迎えする場所にふさわしいことを示し、お正月にやってくる「歳神様」をお迎えする目印になります。
しめ飾りのルーツは、もちろんしめ縄です。かつてはお正月の前に、しめ縄を家の周りに張り巡らせて邪気を払い、お正月を迎えていました。これに縁起物がつけられるようになり、現在のしめ飾りのかたちになったのです。
お正月にやってくる歳神様とは?
しめ飾りやお正月飾りを飾ることでお迎えする歳神様。歳神様は、お正月に各家にやってきて、幸せや豊作を運んでくれる神様のことです。
もう少し詳しく説明すると、歳神様のルーツは3つあり、これらが合わさったものと考えられています。
1つ目は「歳」という言葉が穀物の収穫サイクルを表すこと。「歳」は「登志」つまり穀物のことで、米などの穀物の収穫サイクルを表すことから、穀物の神、豊作の神という意味をもちます。
2つ目は、民間信仰において、祖先の霊は山に住んでおり、春になると田んぼに降りてきて農耕を見守る、山の神、田の神であるという信仰があり、お正月にもやってくると考えられてきたことです。
そして3つ目は「来訪神」としての意味です。来訪神とは、年に一度決まった時期に人間界に降りてくる神様のことで、秋田のナマハゲや鹿児島のトシドンなど、日本中、世界中にこの習俗があります。
つまり「歳神様」は、農耕の神様への信仰と民間の祖霊信仰、毎年くる来訪神の性格が融合した存在なのです。歳神様の呼び方は、御歳神、歳徳神、恵方様、お正月様、とんど様など地域によってさまざまです。
しめ飾りの縁起物の意味
お正月のしめ飾りには、地域によってさまざまな形があり、縁起物の種類や数もさまざまです。
縁起物と意味の例をあげると、海老や鶴、亀は長寿を祈願し、橙(だいだい)は家が代々続くことから子孫繁栄、末広がりの扇や亀の甲羅の六角形は開運や吉兆を表します。
また裏が白いシダ植物の葉「裏白」は、表裏なく潔白な心や長寿を表します。ほかにも水引きには、封印や魔除け、縁結び、松ぼっくりは子孫繁栄、稲穂は豊作祈願というように、それぞれに意味があるのです。
お正月飾りの意味
お正月飾りにはしめ飾りのほかに、門松、鏡餅があります。これらにも意味や歴史がありますので、以下で説明しますね。
門松の意味
門松は、お正月に家の入口に建てられる対になった松や竹の飾りです。長さを違えた3本の竹と松、梅をあしらい、荒縄で結んだものが一般的なかたちで「飾り松」、「松飾り」、「立て松」とも呼ばれます。
門松の意味は、歳神様をお迎えする目印になるほか、歳神様がくるための依代としての意味があります。さらに門松に使われるパーツそれぞれにも意味があり、松は神が宿る木であり、一年中緑の葉をつけ、樹齢も長いので、永遠の命や不老長寿を表します。そして竹は生長が早いので、生命力や繁栄の象徴であり、梅は他の花に先駆けて咲くことから、出世や開運の象徴を表します。
門松は平安時代に宮中で行われた「小松引き」がルーツと言われています。小松引きとは、その年の最初の「子(ね)の日」に松の木を引き抜いてくる行事で、長寿を祈願するものでした。
ちなみに、関東ではシンプルな門松が主流で、関西では葉牡丹や南天、熊笹などで華やかに飾ったものが主流といわれています。
鏡餅の意味
歳神様への御供物であり、秋に新しくとれたお米で作る鏡餅。餅はよく伸びることから、長寿や、無病息災を祈る意味があり、古くから神仏に供える神聖な食べ物とされてきました。鏡餅の風習は平安時代には存在していたといわれています。
なぜ鏡というのかというと、餅の形が昔の鏡の形に似ていたから。昔の鏡は青銅製の丸形をしており、光を反射して太陽のように光るため、天照大神に見立てられてご神体となることもある神聖なものでした。現在でも神社の奥や神棚の奥に丸い鏡がありますよね。
なぜ大小のお餅を重ねるのかというと、陰と陽を表す、幸福と財産が重なって縁起がいい、円満に年を重ねるといういくつかの理由があります。
鏡餅の飾り方は、「三方(さんぽう)」という供物をのせる台を用意し、その上に白い和紙か、四辺を赤く染めた「四方紅(しほうべに)」という紙を敷き、「裏白」というシダの葉、または「譲葉(ゆずりは)」、そして「紙垂(しで)」を敷いて、その上に鏡餅をのせます。鏡餅にのっている橙は、木から落ちずに成長し、1本の木に代々実がなるため、代々家が続き子孫が繁栄するという意味があります。
とはいえ、全て揃えるのは大変なので、飾る場所を清浄にし、和紙などのうえに飾るだけでも十分といわれています。鏡餅は、鏡開き(11日)になってから、木槌などで割っていただきましょう。
まとめ〜お正月飾りの意味を知ってより深く楽しもう〜
しめ縄から派生したお正月のしめ飾りや門松、鏡餅には、本体だけでなく用いられているもの、飾り物すべてに意味があることがわかりました。昔から日本人は、全てのものに意味を見出し、願いを込めてお正月を迎えていたのですね。ぜひ意味を考えながら、お正月の準備をして迎えてみてください。