ほとんどの神社で目にする「しめ縄」。なんとなく神聖な感じはするけれど、意味を知り注目して見ることは少ないかもしれません。しかし、神社のしめ縄の意味や役割、由来、しめ縄のある場所による違いを知れば、より神社へのお参りが意義深く、興味深いものになるでしょう。
しめ縄と神社、鳥居との関係
神社の境内をよく見てみると、鳥居だけでなく拝殿や御神木、巨石、狛犬、境内の周りなど至る所にしめ縄が張られているのがわかります。なぜ神社にしめ縄があるのかというと、おもに「結界」の役割があるからです。
しめ縄とは?
そもそもしめ縄とは、ここから先は神様のいる神聖な場所ですよと示し、よくないものが入らないようにする結界の意味があります。
神社へ参拝ししめ縄をくぐることで、私たちのいる俗世界から神様のいる神聖な場所へと入る意味があり、拝殿の前などにしめ縄があるのは、その建物の内部や奥にある山などに神様がいらっしゃるから。御神木や巨石にしめ縄が張られているのも、大昔から神が宿ると考えられているからなのです。
しめ縄の起源は日本神話の「天岩戸隠れ」までさかのぼります。
どのような話かというと、天照大神(あまてらすおおみかみ)が弟の素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴狼藉に困り、天岩戸へ隠れてしまいます。世界は闇に包まれ混乱したため、高天原の神々は天照大神が岩戸から出るよう宴をひらきました。様子を覗こうと顔を出した天照大神を天手力男(あまのてじからお)が引っ張り出し、2度と岩戸へ入れないように尻久米縄(しりくめなわ)を張ったといいます。
この「尻久米縄」がしめ縄のはじまりと言われているのです。
神社とは?
そもそも神社とは、日本古来の信仰である神道の施設であり、神様の滞在する場所であり、祭祀を行う場所です。
古来の神社は、山や川、岩などの自然崇拝をはじめ、すべてのものに神々が宿ると考えるアニミズム(八百万の神の信仰)からはじまりました。建物ありきではなく、もともと神様がいる場所に建てられたのが神社だったのです。
神社にも種類があり、神宮、宮、大社、神社、社という呼称によって分けられています。
「神宮」はもともとは伊勢神宮のことでしたが、現在では皇室の祖先とされる神々を祀る25社あまりが存在しています。
「宮」は皇族や歴史上の重要人物を祭神として祀る神社につけられる社号で、徳川家康を祀った「東照宮」や菅原道真を祀った「天満宮」が有名です。
「大社」は、もともとは出雲大社のみに使われていましたが、明治以降に自由に名乗れるようになったため、伏見稲荷大社など規模の大きい神社が名乗っています。
「神社」は、一般的な神社を指し、神宮や大社なども全てひっくるめて神社と言うこともあります。「社」は小規模な神社を指します。
鳥居とは?
鳥居はしめ縄と同じように、神聖な場所と俗世界との境目を表すほか、神社の存在をしめす目印や門としての役割があります。また、鳥居をくぐることは「禊(みそぎ)」と同じような意味を持ち、神社に入るための儀式的な意味も持っています。
鳥居という言葉の由来は諸説あり、言葉自体の登場は10世紀になってから。それまでは天門、神門、助木、鶏居などさまざまな言葉で呼ばれていました。
なぜ鳥(鶏)の字が使われているのかというと、しめ縄の起源にもなった天岩戸隠れの神話のなかで、「常世の長鳴鳥」を集めて鳴かせ、天照大神を外へ出そうとしたことが由来しています。この説の他にも「鳥が居た木」「通り居る」など由来には諸説あります。
しめ縄のある場所による意味の違い
しめ縄が張られている場所は神社や御旅所(神様が祭などの際に神社の外で休憩する場所)だけでなく、自宅や店舗にある神棚、そしてお正月の玄関や水回りなどにもありますよね。
ここでは、神社、神棚、しめ飾りそれぞれの意味の違いをみてみましょう。
神社のしめ縄
神社にあるしめ縄は先述の通り、神様がいる神聖な場所を示すためのものです。
しめ縄にはさまざまな形や大きさがあり、例えば「ごぼう締め」「鼓胴型」「一文字型」「大黒締め」といった一般的な形のものから、龍や蛇の形をしたもの、ハサミのように交差させたものなど独特な形のものがあります。
また、一般的にしめ縄は左が上位という考えに従って、向かって右側に綯い始めの太い方をむけますが、出雲大社(島根県)や大山祇神社(愛媛県)など、向きが逆になっている神社もあります。
しめ縄には多くの場合、特殊な裁ち方をした白い紙「紙垂(しで)」や藁を束ねて作ったしめの子(房)が垂れ下がっている場合が多く、形や数も神社によってさまざまです。
神棚のしめ縄
自宅やお店にある神棚。神棚は、家庭内で神様をお祀りするための場所のことで、神社でいただいた御札を祀り、神具を揃えてお供え物をします。家内安全や無病息災、商売繁盛などを祈願する小さな神社のようなものですので、神棚のしめ縄は神社のしめ縄と同じようなものと考えてよいでしょう。
神棚のしめ縄は一般的に「牛蒡型」が使用されていますが、地域によって異なります。
お正月のしめ飾り
神社のしめ縄が派生したものがお正月のしめ飾りです。かつてお正月には家のまわりに縄を張り、邪気を払っていたものが、次第に小型化し、縁起物の飾りをつけるようになりました。
しめ飾りは歳神様をお迎えする目印として玄関などにつけられます。
神社のしめ縄は誰が作っている?
神社のしめ縄はおもに氏子が作り奉納します。氏子とは自分の住む土地を守る氏神を信仰する人たちのことで、古くから氏子たちが手作業で作って奉納するのが一般的でした。またはしめ縄製造会社が制作したものを奉納する神社や出雲大社のように専属のしめ縄製造組合が存在する神社もあります。
また、近年では高齢化や後継者不足などにより、奉納が難しくなっている神社もあり、掛け替えの頻度を減らしたり、数十年間掛け替え不要な合成繊維のしめ縄を活用したりといった事例もあるのです。
まとめ〜しめ縄の意味を知り、心を込めてお参りしましょう〜
神社の境内に足を踏み入れると、空気が変わったような感覚になった経験はありませんか?
しめ縄は、神様のいる神聖な場所を表し、よくないものが入っていかないようにする結界の役割があります。しめ縄の形や大きさも神社によって特徴がありますので、しめ縄にも注目しながら、心を込めてお参りしてはいかがでしょうか。