神社の鳥居や拝殿にしめ縄があるのはご存じの方も多いでしょう。しかし、よくよく見てみると、狛犬や手水舎、御神木、巨石などさまざまな箇所にしめ縄が取り付けられていることに気づきます。
この記事では、神社や仏閣などのどこにしめ縄が取り付けられているのかに加え、しめ縄を取り付ける際のしきたりやルールをご紹介します。神社や仏閣を巡るのがもっと楽しくなりますよ!
目次
しめ縄が取り付けられている場所〜神社〜
しめ縄といえば神社が思い浮かびますよね。神社には予想以上にしめ縄が取り付けられていることが多いので、境内や周囲を探してみると楽しいでしょう。ここでは神社のどこにしめ縄が取り付けられていることが多いか解説します。
神社の境内にあるしめ縄
神社では多くの場合、鳥居、拝殿、手水舎、狛犬などにしめ縄が取り付けられており、さらに境内をよく見てみると、御神木や石などに取り付けられている場合もあります。厄除けや無病息災を祈願する「茅の輪くぐり」の「茅の輪」もしめ縄の一種です。
しめ縄には、神様がいる神聖な場所と我々がいる俗世とを隔てる役割があります。古来から神様は目に見えず、そこかしこに存在すると考えられており、神様が先に存在し、そこに建物(拝殿など)を建てたり、巨石や巨木、岩、滝などの自然物を神聖なものとしてしめ縄を取り付けたのです。
そのため神様の依代(よりしろ)としての意味もあり、しめ縄のある場所は神聖な場所で、神様がいることを表しているのです。
大昔から人々は身の回りにあるありとあらゆるものにも神を感じていたことは、現在でも和歌山県の那智の滝や奈良県の三輪山など滝や山といった大きな自然そのものをご神体としている場所があることからもわかりますね。
神社の境内の外にあるしめ縄
神社の境内だけでなく周りに目を向けると、周囲をぐるりとしめ縄で巻いている神社や「御旅所(おたびしょ)」がある神社があります。御旅所というのは、神社の祭礼のときに神(神体を乗せた神輿)が途中で休憩・宿泊したり、神輿の目的地になったりする場所のことです。
例えば京都の祇園祭では、八坂神社の「四条御旅所」があり、八坂神社を出発した神様が還幸祭まで留まる場所とされています。祭礼の時にのみ御旅所が設置される神社もありますが、御旅所にはしめ縄が張られているので、探してみるのも面白いかもしれません。
さらに基本的に神様が宿っている場所にしめ縄を取り付けるので、これが家の中になると神棚になります。お正月のしめ飾りも、家から邪気を払って年神様を迎える意味があるので、しめ縄が変化したものといえます。
しめ縄が取り付けられている場所〜仏閣〜
神社にいるのは神様ですが、仏閣=寺にいるのは仏様です。しめ縄は神様を表すものなので、基本的に寺にはしめ縄はありません。
しかし、中には鳥居や手水舎、鐘楼などにしめ縄が取り付けられている寺もあり、これには「神仏習合」と「神仏分離」が関わっています。
神仏習合と神仏分離
神様の信仰は縄文時代頃から存在したと言われていますが、仏教が中国から正式に伝来したのは6世紀半ばころでした。8世紀の奈良時代から徐々に神と仏は同じようなものとして人々に信仰されていきます。
そして平安時代に入り「日本の神様は、仏様の化身」とする思想 「本治垂迹説」によって理論化されました。例えば、伊勢神宮に祭られている天照大神(アマテラスオオミカミ)は太陽の神様だから、太陽と関わりの深い大日如来の化身、出雲大社の祭神である大国主命(オオクニヌシノミコト)は、大国がダイコクとも呼べるため、大黒天の化身、といったように考えられていました。
しかし、江戸時代に入ると国学が流行し「神学が優位」という考えが主流になっていきます。明治時代に入ると、文明開化の一環として「神仏分離」が進められ、多くの神社と寺は分離されました。
このように明治時代に多くの神社と寺が別々にされてしまいましたが、現在も鳥居が残るなど、一緒だった頃の名残がある寺が全国に存在するというわけです。
鳥居が見られる寺
鳥居が見られる寺は、大阪府の四天王寺や奈良県の生駒聖天(宝山寺)、霊山寺、金峰山寺。徳島県の箸蔵寺、愛媛県の稲荷山や龍光寺、大分県の佛山寺、栃木県の法輪寺、愛知県の豊川稲荷や豊川閣妙厳寺などで、真言宗総本山の金剛峯寺がある高野山には鳥居が数多くあるそうです。
また、正月だけ五穀豊穣などの願いを込めてしめ縄を飾るお寺もあり、千葉県の成田山新勝寺は有名です。
しめ縄取り付けの際のしきたりやルール
しめ縄は神様の宿る神聖な場所に取り付けられるのはもちろんですが、地域や神社によって取り付け方が違います。
古くから「左=聖、右=俗」とする考え方があるので、しめ縄は左縄で作られており、縄を綯う始まりの地点である綯い始めを向かって右側(神様から見て左)に取り付けることが一般的です。しかし中には「綯い始めを東に向ける」という地域や伊勢地方などのように逆になっている地域もあるので注意が必要です。
また、しめ縄の種類もさまざまで、真ん中が膨らんだ鼓胴型、左右の太さが違う牛蒡型や大根型、全体が同じ太さである一文字型、前垂れのような形など、形や太さ、しめ縄から下がっているしめの子や紙垂(かみしで)の数や形も本当にさまざまです。
このようにしめ縄は千差万別と言ってよく、多くは古くから受け継がれてきた作法に則って取り付けられているのです。
しめ縄の種類に関する記事はこちら↓
まとめ〜しめ縄を知って神社などのしめ縄巡りを楽しもう〜
主に神社で見られるしめ縄。一口にしめ縄と言っても、種類や取り付け方など千差万別で、鳥居や拝殿だけでなく自然物などにも取り付けられています。さらに神社の境内だけでなく、神社の周囲や一部の寺、家の中にもしめ縄は存在し、昔からとても身近な存在だったといえます。神社に行かれる際は、鳥居や拝殿だけでなく、境内の中や周囲を巡ってしめ縄を探してみるとより楽しめるでしょう。