十二支のはじまりの動物、ねずみ。ねずみは人間に害を与えるという認識の一方で、繁殖力の高さや神話などから、富を与える動物とも考えられていました。この記事では、子年やねずみの意味、神様との関係、ねずみにまつわる神社やお寺をご紹介します。
子年やねずみの意味
本来、十二支には動物の意味はなく、十二の方角に「子、丑、寅…」といった漢字が当てられていたものでした。後に覚えやすくするため、動物を対応させたので「子ー鼠」「丑ー牛」のように普段使用している漢字とは異なっているのです。干支の1番目にある「子」は新しい生命が種子の中にきざしはじめる時期。新しい物事や運気のサイクルの始まる年になると考えられています。
ねずみと日本人
ねずみと日本人との出会いは縄文時代といわれており、中国南部から渡ってきていたと考えられています。ねずみは人家の近くに住むねずみと野ねずみがいますが、室町時代以降、都市化がすすむと、人家の近くに住むねずみの害が目立つようになりました。
ねずみは食料や書物、器、衣類などをかじるため、人々は鼠取りをしかけたり、猫を飼ったり、明治時代頃からは、殺鼠剤を使うなど対策をしていました。
その一方で、人に害を及ぼさないねずみもいたことや繁殖力の高さが子孫繁栄、商売繁盛、家運隆盛の象徴とみられ、大事にされたー面もありました。とくにネズミが大黒天と結びついたことから、家に住む白鼠は大事にされたといわれています。
ねずみは大黒天の使い
なぜねずみが大黒天の使いなのかというと、『古事記』でのエピソードが由来です。大国主命(おおにぬしのみこと)は、須世理毘売(すせりひめ)との結婚を許してもらうために、素戔嗚尊(すさのおのみこと)からの試練を受けます。
野原に放った鏑矢をとってくるようにという試練で、大国主命が野原に入ると四方から火が放たれてしまいました。そこで登場したのがねずみで、逃げ場を教えた上に、鏑矢を持ってきたというのです。
大国主命はのちに大黒天と神仏習合したため、ねずみは大黒天の使いとなりました。こうしてねずみは五穀豊穣や実り、財力の意味をもつこととなります。
ねずみにまつわる神社|御祭神が大国主命
ここでは、ねずみにまつわる神社のうち、ねずみが救ったといわれる「大国主命」を御祭神
とする神社をご紹介します。
大豊神社(京都府京都市)
京都市鹿ヶ谷・南禅寺一体の産土神、氏神様でもある大豊神社。創建は仁和3(887)年と古く、哲学の道の「ねずみの社」として有名な神社です。
境内末社・大国社には「狛ねずみ」が鎮座しており、右が学問をあらわす巻物を抱え、左が豊穣と薬効、長寿をあらわす水の玉を抱えています。
さらに、ねずみのほかにも、巳、狐、猿、トビなどの神使いが鎮座し、椿や梅、桜、紫陽花などの植物も楽しめる神社です。
出雲大社(島根県出雲市)
大国主命といえば、島根県の出雲大社が代表的です。
出雲大社には、日本一の大きさを誇るしめ縄や国宝に指定されている大社造のご本殿が有名で、毎年11月の神在月(神無月)には、全国の神様が集結することでも知られています。
ご利益としては、縁結び、子授け、五穀豊穣、病気平癒、商売繁盛、交通や航海の守護などがあげられます。
出雲大社は全国に分祀されているので、遠方の場合は分祀社にお参りしても問題ありません。
ねずみにまつわる神社|御祭神が大黒天
ここでは、七福神の一柱でもある大黒天を祀っている神社をご紹介します。
神田明神(東京都千代田区)
正式名称は神田神社といい、東京の中心にある多くの町の氏神様です。
一ノ宮の御祭神が大黒天。天平2(730)年に鎮座したと伝わり、国土経営、夫婦和合、縁結びのご神徳があるといわれています。
二荒山神社(栃木県日光市)
日光山信仰のはじまりとなったともいわれる二荒山神社は、二荒山をご神体として祀っており、古くから下野国の一ノ宮として信仰されてきました。
本殿には大己貴命(おおむなちのみこと・大国様のこと)が祀られており、招福、縁結び、開運のご利益があるといわれます。
子年にお参りしたいお寺|千手観音像にお参りできる
子年の守護本尊は千手観音菩薩とされています。なぜかというと、代表的な仏様を八尊仏と称し、それぞれ四方八方に分かれて住まわれているという考え方があるからです。子(北)の方角にいるのが千手観音様であるため守護本尊とされているとのことです。
ここでは、全国でも有名な千手観音様にお参りできる寺をご紹介します。
三十三間堂(蓮華王院・京都府京都市)
三十三間堂は、天台宗の古刹であり、鎌倉時代に創建された南北約120mの本堂は、国宝に指定されています。
ここに安置されているのが、すべて国宝である本尊の千手観音坐像、そして千体千手観音立像です。前後10列の階段状の壇上に千手観音様が1000体整然と並んでいるお姿を拝むことができます。
葛井寺(ふじいでら・大阪府藤井寺市)
葛井寺は7世紀前半に百済からの渡来人葛井氏の氏寺として創建されたと伝わるお寺です。
葛井氏一族は大宝律令の作成にも関わりました。
西国三十三番所でもある葛井寺のご本尊「十一面千手千眼観音菩薩」は、1041本の手をもつことが特徴。毎月18日にご開帳される国宝の秘仏です。
まとめ|子年の意味を知れば、お参りがもっと楽しくなる
古くから人間の食糧や物品をかじるなど駆除の対象でもあったねずみですが、一方で、神話の世界では大国主命を助けたことで神の使いにもなり、繁殖力の高さから、子孫繁栄や富の象徴として大切にされてきた歴史もあることがわかりました。
ねずみや大国主命、大黒天にまつわる神社は全国にありますので、お近くの神社へお参りしてみてはいかがでしょうか。