かつては多くの神社で、氏子たちが集まってその年にとれた稲わらでしめ縄を作り、奉納していました。しかし近年、高齢化や後継者不足により、製造販売店に注文する神社も増えています。
本記事では、しめ縄作りの現状やしめ縄の製造販売店の事例、合成繊維のしめ縄が注目されている理由や取り組みをご紹介します。
しめ縄が買える場所
神社のしめ縄を掛け替える際に新しいしめ縄を入手する方法は、氏子や地域の人々が集まって手作りをするか、製造販売店に注文するかのいずれかです。
近年では、地域の高齢化や後継者不足、材料の入手が難しくなってきたことが理由で、製造販売店に注文する神社が増えています。
神社のしめ縄が買える「しめ縄専門店」は全国にあり、インターネットでの注文や地域によっては取り付けサービスを行っている店もあります。
お正月の家庭用のしめ飾りは、インターネットでの販売はもちろん、年末にはスーパーやホームセンターなどの量販店でも購入できます。
しめ縄作りの現状
ではなぜ製造販売店への注文が増えているのでしょうか。
それは神社のしめ縄もお正月に家庭につけるしめ縄も、職人の高齢化や後継者不足の問題に直面しているからです。若い人の人口減少や都市部への流出、しめ縄作りでは生計が立てられないことも起因しています。
さらに天然の材料の入手が困難になっている問題もあります。しめ縄には長さのある稲わらが必要ですが、機械での刈り取りでは、稲わらは細かく裁断されてしまいます。
また、高価な伝統工芸品よりも、安価な海外製品が店頭に多く並ぶようになり、安価な方を選ぶ消費者が増えたこともあげられるでしょう。
しかし、このまま伝統的な技術を持つ人がいなくなってしまえば、しめ縄文化が消滅してしまう…そのような危機感から、伝統を未来に残すための取り組みも全国で行われています。
例えば、ホームページから協力者を募る、富山県射水市の「しめ縄協力隊」、若いしめ縄職人育成の取り組みである、伊勢宮忠の「しめ縄を未来へつなぐプロジェクト」などが挙げられます。
(しめ縄協力隊)
注目される合成繊維のしめ縄
以上のように、しめ縄作りの継承が難しくなり、さらに氏子の減少により毎年の掛け替え作業が困難な神社もあります。とくに大きなしめ縄を作る技術を持つ人が減っているため、大きな鳥居に見合う大きなしめ縄作りは困難になりつつあります。
天然繊維のしめ縄に比べて劣化がしにくいのが合成繊維のしめ縄です。強度や耐水性、防カビ性に優れており、数十年間掛け替えしなくても美しい姿が保たれます。
そのため、こまめな掛け替えが難しく、神社のお世話をする人の負担になっている神社では、合成繊維のしめ縄を取り付けることも増えているのです。
折橋商店のしめ縄の特徴や取り組み
しめ縄の製造販売に約40年前から携わっているのが、折橋商店です。
折橋商店のしめ縄は、黄金色で左右均等が美しいことが特徴で、30年以上の耐久性をもつしめ縄です。
合成繊維といっても、機械で作るわけではありません。熟練の職人たちがチームワークを活かし、より藁のしめ縄に近い見た目になるように工夫した美しいしめ縄を作っています。
しめ縄は本来その年にとれたお米の藁を使って作り、豊作を神様に感謝するものとして、神社に奉納されてきました。ひとたび合成繊維のしめ縄にしてしまうと、その伝統が失われるのでは?との危惧もあります。
しかし、地域に密着した小規模な神社の多くは、神社のお世話をする人の負担が大きくなっており、毎年のしめ縄の掛け替えができずに放棄されてしまう可能性もあります。
神社そのものがなくなると、地域の祭りもなくなり、子どもたちに伝統を伝える機会が失われてしまいます。
折橋商店では日本の伝統を守りたいと、職人たちが誇りをもってしめ縄を作り上げているのです。
まとめ〜製造販売店は日本の伝統を守る〜
本来、しめ縄作りは氏子同士のコミュニケーションを取る大事な場であり、神様へその年の豊作を感謝して奉納するものでした。近年では神社の維持そのものが難しくなるなど、神社の直面する問題は大きくなっています。しめ縄製造販売店と神社や氏子会などの工夫も各地でされています。しめ縄や神社という伝統を後世に残していきたいものですね。