「長年、氏子会で神社へのしめ縄奉納を行っているが、年々開催が厳しくなっている…」特に近年、このような問題を抱える神社が増えてきました。特に規模の小さな神社ほど顕著で、さまざまな方法が模索されています。この記事では、神社のしめ縄を作っているのは誰か、しめ縄奉納の現状、事例をご紹介します。
目次
神社のしめ縄を作っているのは誰?
神社のしめ縄は多くの場合、地域の氏子たちや崇敬会会員の手によって作られます。
古くから多くの神社では、新年のはじまりや例大祭などに合わせて、氏子たちが自分たちの田んぼでとれた稲わらなどを使って、しめ縄を作り奉納していました。
氏子と崇敬会の違いを説明すると、氏子はおもに住んでいる地域の神社をサポートしますが、崇敬会は、神社や御祭神を主に資金面でサポートする組織であり、土地の縛りがなく、日本全国どこの神社の崇敬会にも入れるというのが特徴です。
若干の違いはありますが、どちらも神社をサポートする組織なのです。
氏子たちのしめ縄奉納の現状
手作りのしめ縄がある神社は年々減ってきています。
それは、少子高齢化による人手不足や地方の過疎化、後継者不足によってしめ縄作りの技術を伝えられないなどの問題があるためです。毎年の資金集めや人員集めの負担も氏子総代など代表者にとっては大きなものです。
また、稲作の機械化によりしめ縄用の稲わらの調達が困難になっていることもあげられます。昔、手で刈り取りをしていた時代には、そのまま干して使用できましたが、コンバインで刈り取りを行うと稲わらが細かく裁断されてしまうため、長さが足りないのです。
そんななか、しめ縄作りをイベントのように開催し、数年間取りやめとなっていたしめ縄奉納を復活させたのが、東京・浅草神社です。参加費やご協賛を募り、鳥居や狛犬などに麻のしめ縄が奉納されました。(浅草神社ホームページ)
他にも、しめ縄制作のスパンを長くしたり、長年の掛け替えが不要な合成繊維のしめ縄に切り替えたりと工夫を重ねている神社や氏子会もあります。
氏子や崇敬会によるしめ縄奉納の事例7選
ここでは氏子や崇敬会によるしめ縄奉納の2023年の事例をご紹介します。
青森県弘前市・稲荷神社
和徳町青和会会員が作ったしめ縄を奉納し、鳥居に飾って新年を迎える準備をしました。
このしめ縄奉納は約45年続く行事で、しめ縄の掛け替えは4年ぶりとのこと。
2023年は3日間で、のべ30人の会員たちが長さ1.6m〜3.3mのしめ縄5本を制作したそうです。
会員が町内を練り歩き、新しいしめ縄のお披露目をした後、神社で神事を行います。
その後、境内にある5つの鳥居から古いしめ縄を取り外し、清めたばかりの新しいしめ縄を取り付け新年の安泰などを願ったそうです。
また、古いしめ縄は31日の夜に境内でお焚き上げされます。
青森県十和田市・七戸神明宮
七戸神明宮のしめ縄は芋久保地区の有志の住民たちによって奉納されます。夏に地区内で刈り取った「すげ」を使って丁寧に作り上げた長さ12mのしめ縄です。鳥居へ飾りつけて、新年の準備を整えました。
広島県広島市・住吉神社
広島市の住吉神社では、神社の関係者およそ10人が参加し、しめ縄が奉納されました。
奉納されたしめ縄は新しく刈り取られた稲わらで作られたもので、長さ7m、重さ300kgの大きさがあります。高さ4mの拝殿には重機を使って取り付けられました。
住吉神社では18年前から5年に1度、しめ縄を取り替えていましたが、新型コロナの影響で8年ぶりの掛け替えとなったそうです。
三重県伊勢市・椿大神社
伊勢市にある椿大神社では、氏子有志でつくる「むすびの会」による大しめ縄奉納が12月24日に行われました。
拝殿前で奉納式の祈祷とお祓いを受けてから、古いしめ縄を取り外し、新しいしめ縄に掛け替えました。
しめ縄は、本宮拝殿には直径約30cm、長さ約4.5mのものが、別宮・椿岸神社には直径約25cm、長さ約2.5mのものが奉納されました。
栃木下野市・下野愛宕神社
栃木県にある下野愛宕神社では、氏子たちが10月頃から作り上げてきた長さ5m、重さ約15kgのしめ飾りが鳥居へ取り付けられました。
さらに氏子たちは、正月飾りとして約100本のごぼう締めも作っており、境内で家庭用のしめ飾りとして販売されます。
福岡県福津市・宮地嶽神社
福岡県にある大しめ縄で有名な宮地嶽神社では、毎年恒例の「大しめ祭」が行われました。約100人の氏子や神職が2本の縄を撚り合わせ大しめ縄を作る神事で、完成したしめ縄は、長さは11m、直径は2.6mに及びます。このしめ縄は参拝客が見守るなか、重機を使って拝殿に取り付けられます。
大しめ祭では、参拝者が祈願書をしめ縄のなかに編み込んでもらえますし、2023年から「神汁」という具沢山の汁物も無料で配られるなど、氏子だけでなく参拝者も楽しめる神事になっています。
奈良県桜井市・大神神社
大神神社の冬の風物詩となっているのが「大注連縄の飾り付け」です。
この大注連縄は、崇敬団体である岸和田市の照友会により昭和29年から奉納されているものです。
岸和田市から運ばれた4本のしめ縄は、お祓いを受けた後、拝殿前まで運ばれ、拝殿にて「奉納奉告祭」が執り行われたのち、取り替えられます。しめ縄の大きさは最大のもので長さ8m、重さ400kgにもなります。
まとめ〜神社も時代に合わせた変化が求められている〜
氏子や崇敬会によるしめ縄奉納が続けられている神社、参加者を募ってしめ縄を奉納する神社、合成繊維のしめ縄に切り替えて、負担を減らす神社など、神社のしめ縄事情はさまざまです。地域の現状や未来予測に合わせて、変化しつつもしめ縄奉納の伝統を守っていきたいものですね。