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しめ縄の材料のひとつ「麻」| 意味や歴史、伝統工芸を解説

しめ縄_材料_麻

しめ縄といっても、材料はさまざまですが、この記事では「麻」を取り上げてご紹介します。伊勢神宮のお札を「神宮大麻」と呼ぶように、古くから穢れを祓うものとして、また日用品の材料として日本人と密接に関わってきました。この記事では麻の特徴や歴史、伝統工芸について解説します。

 

 

 

 

しめ縄の材料いろいろ

 

しめ縄_材料

 

しめ縄といっても、材料はいくつか種類があり、今回取り上げる麻のほかにも、稲わら、真菰、スゲ、い草、合成繊維などがあります。

 

ひとつずつご紹介します。

 

稲わら

最も一般的に使われるのが稲わらです。それもそのはずで、日本の広い範囲で古くから稲作が行われていました。人々は収穫の感謝と翌年の豊作を祈り、その年にとれた稲わらで作ったしめ縄を、神社に奉納したり、家のしめ飾りとして飾ったりしていたのです。

 

真菰

真菰は縄文時代からあったとされる、水辺に生える植物のこと。茎のしなやかな強さと鮮やかな緑色、爽やかな香りが特徴で、古くから邪気を払う植物とされてきました。

出雲大社では、真菰のしめ縄や茅の輪が使われ、6月には「真菰神事」が行われます。

 

スゲ

スゲも水辺に生える植物で、北海道や東北地方で使われることが多い材料です。

 

い草

畳の材料であるい草をしめ縄に使う地域もあり、美しい光沢と爽やかな香りのしめ縄ができます。

 

合成繊維

近年注目されているのが、合成繊維のしめ縄です。合成繊維のしめ縄は耐久性に優れているため、頻繁な掛け替えが不要。氏子の減少や高齢化により管理が負担になっている神社などの強い味方になっています。

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麻の特徴

 

しめ縄_麻_特長

 

ここからは、本題である麻についてご紹介します。

麻は、古くから清浄さや潔白、穢れをはらうものとされてきました。

麻のしめ縄は、光沢が美しく上品さが特徴で、神社のしめ縄から家庭用インテリアまで幅広く活用されています。

 

麻の種類

麻には「大麻(おおあさ、たいま)」「苧麻(ちょま)」「亜麻」があり、古代から日本に自生していたのが「大麻」、「苧麻」「亜麻」がのちに海外より持ち込まれたものでした。

 

伊勢神宮と麻

伊勢神宮のお札を「神宮大麻」といいます。神宮大麻の「大麻」は「おおぬさ」と読み、神々への捧げ物、お祓いの際に用いられる木綿や麻のことをさしています。

はじまりは、伊勢神宮の御師が、お祓いに使う祓い串を配ったことといわれており、現在では厳重なお祓いをへて授けられるお神札をそう呼びます。

 

相撲と麻

日本の国技であり、もともとは神様に捧げる神事でもあった相撲。最高位を横綱といいますが、横綱とはしめ縄の名称でもあるのです。

横綱は、銅線の芯が入った大麻繊維の束に、晒し木綿を固く巻いた3本の綱でできており、霊力を宿したものとされています。

 

麻の歴史

 

麻_歴史

 

麻と日本人との関わりは古く、縄文時代早期の鳥浜貝塚(福井県)で大麻製の縄が出土しているのが最古とされています。また縄文後期の中山遺跡(秋田県)で漆を濾過して精製するために使用した苧麻の編布も見つかりました。

3世紀の『魏志』倭人伝では「稲や麻を植え、養蚕し、布を織っている」という意味の記述が見つかっています。

 

また、日本神話にも登場しており、しめ縄が登場した物語でもある「天岩戸神話」では、岩戸にひきこもった天照大神を誘き出すために、下の方の枝に白丹寸手(シラニギテ)、青丹寸手(アオニギテ)を取り付けたとあります。この「白丹寸手」が楮の樹皮の繊維で織った布の御幣(ぬさ)、「青丹寸手」が麻の繊維で織った布の御幣を指しているといわれています。

 

さらに律令国家になると、朝廷へ収めるべき税である「租庸調」の調が麻や麻布であり、「正倉院宝物」にも靴や袋、衣装など麻でつくられたものが残っています。

 

武士の時代になると、献上品として上質な麻布が喜ばれました。例えば源頼朝は馬や絹糸、苧麻の糸で織った越後上布を朝廷に献上したという記録がありますし、上杉謙信が青苧座(あおそざ)、つまりカラムシ・あおそ(苧麻の繊維を糸状にした束)を特権的に取引できる座を作りました。 

 

江戸時代に入ると、徳川幕府の裃として着用されたほか、庶民の魚網や野良着など幅広く使われていました。また「麻の葉模様」が着物の流行りのデザインになったこともあり、需要が増えたといいます。

 

麻と伝統工芸、その現状

 

麻_伝統工芸

 

上布とは、苧麻の糸を用いて平織にした上質な麻布のことで、新潟県南魚沼市と小千谷市を中心に生産される「越後上布」と「小千谷縮(おじやちぢみ)」、沖縄県宮古島で生産される「宮古上布」は、国の重要無形文化財に指定されています。

「上布」と呼ばれるものには他にも能登上布や近江上布があり、最高級の麻織物として継承されてきました。

 

伝統工芸の技術の継承が難しいこともそうですが、国産の上質な大麻(精麻)の栽培の継承も危機に瀕しているといいます。

戦後の法令や化学繊維、外国産の安価な繊維、世間の認識、麻農家の減少や高齢化、担い手不足などが影響しているためです。

 

まとめ〜古くから日本人とともにあった麻〜

 

日本人_麻

 

縄文時代から日本人の生活と密接に関わってきた麻。麻は神聖さや霊力を持ち、魔除けや邪気を祓うものとして、また伝統工芸として、そして日々の生活の道具として活用されてきました。しかし、近年は国産の麻農家の減少や後継者不足などが問題になっています。

 

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