しめ縄やしめ飾りの材料となる稲わらや麻ですが、これらの材料自体にも意味があり、お正月のしめ飾りについている縁起物にも、それぞれに意味があります。
この記事では、しめ縄やしめ飾りに使われる材料の意味をご紹介します。意味を知れば、人々に受け継がれてきた願いがわかり、しめ縄やしめ飾りにより親しめるでしょう。
しめ縄・しめ飾りの意味と起源
しめ縄は神社の鳥居や拝殿、御神木、巨石、手水舎などあらゆるところに張られており、神様のいる神聖・清浄な場所と私たちの住む俗世とを隔てる意味があります。境界や結界を表し、よくないものが神聖な空間に入っていかないようにしているのです。
しめ縄の起源は、日本神話の「天岩戸隠れ」だといわれています。天照大神(あまてらすおおみかみ)は、弟である素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴に怒り、天岩戸に隠れてしまいました。そのためさまざまな災いが起こったので、天の神々があの手この手で天照大神が出てくるように促し、ようやく出てきたところで、再び中に入らないよう、しめ縄を張ったという話が伝えられています。
このしめ縄から派生したものがしめ飾りで、かつてはお正月に家の周りをしめ縄で囲み、邪気を払っていたものが、縁起物の飾りをつけることで、しめ飾りと呼ばれるようになりました。しめ飾りは、歳神様をお迎えする目印として玄関に飾られます。
しめ縄の材料と意味
しめ縄の材料は稲わらであることが多いですが、実は他にも種類があります。神聖な場所に使うしめ縄ですので、使われる材料にも意味があるのです。ひとつひとつ見ていきましょう。
稲わら
縄文時代の晩期に中国から稲作が伝わってから、日本では米食文化が続いてきました。
貴重な食べ物であるお米を生み出してくれる稲わらは、生命力の象徴であり、五穀豊穣の証です。
また、お米は神様への供物でもあります。豊かなみのりを神様に感謝し、五穀豊穣の願いを込めながらしめ縄はつくられてきたのです。
麻
麻は、日本神話の時代から、御幣につけられた布であり、古くから魔除け、穢れを祓い、浄化し、心穏やかにする力があるとされてきました。お祓いの際に、神主さんが振るものは「大麻(おおぬさ)」と呼ばれ、かつては麻布が使われることが多かったそうです。
また、麻は伊勢神宮との関係が深いことも特徴で、伊勢神宮のお札は「神宮大麻」と呼ばれ、祓い具である払い串の御真を和紙で包んだものなのです。
真菰(まこも)
真菰は全国でみられるイネ科の多年草で、筵(むしろ)の材料として使われてきました。
邪気を払う神聖な草とされ、出雲大社のご本殿と水垣の内のしめ縄は真菰で作られています。
また、出雲大社では6月1日に行われる「凉殿祭(すずみどのまつり)」において「真菰神事」が行われます。この神事で使われた真菰をいただくと、無病息災や五穀豊穣のご利益があるとされています。
しめ飾りに使われる材料の意味
日本全国で多種多様な形があるお正月のしめ飾りですが、飾りとしてつけられている縁起物にもそれぞれに意味があります。
裏白
裏が白いので、心の清らかさや白髪になるまで長生きできますようにとの願いを表しています。白い裏側が表に来るように飾ります。
ゆずり葉
ゆずり葉は、冬も青々とした葉をつける常緑樹。代を譲るということから「子孫が絶えまない」や「子孫代々受け継がれる」という意味を持ちます。
橙(だいだい)
橙は実が木から落ちにくく、何年も実をつけたままにしていることがある果樹。先祖代々と読みが同じなので、子孫繁栄の象徴となっています。
稲穂
稲穂はお米を象徴します。「みのりの多い年になり、無事にご飯が食べられますように」という願いが込められています。
紙垂(しで)
しめ飾りのついている特殊な裁ち方をした白い紙が紙垂です。紙垂は清浄さをあらわし、稲妻に似たその形は悪いものを寄せ付けないという意味も持ちます。
まとめ〜しめ縄としめ飾りの材料には意味や願いが込められている〜
しめ縄やしめ飾りには、使われている材料それぞれに意味があることがわかりました。
昔から人々は、材料一つ一つに願いを込めながら手作りし、神様に捧げたり、玄関に飾ったりしてきたのでしょう。それぞれの意味を紐解くと、いにしえの人々の姿が浮かんできませんか。