鶏と日本人は古くから深い関わりがあり、酉の市は現在でも商売繁盛や金運アップのご利益があるとして多くの人で賑わう行事です。
この記事では、酉年に焦点を当て、意味や由来、鶏と日本人との歴史、さらには鶏と神仏との関係について詳しく解説していきます。記事の後半では、酉年にお参りしたい、鶏にまつわる神社をご紹介します。
酉年の干支の意味
酉年のとりは「鶏(ニワトリ)」のことを指しています。もともと十二支は植物の様子を表し、酉年は作物が完全に熟した状態をいいます。
酉という漢字は酒壺を表す象形文字で、成熟や実りを表す縁起の良いもの、トリは「取り込む」ことにつながるため、「商売繁盛」や金運アップの象徴とされてきました。
毎年11月に、全国で行われる「酉の市」は、江戸時代から続く商売繁盛のお祭りで、おもに関東地方を中心に行われています。とりこむという意味を持つ大きな熊手「縁起熊手」を売る賑わいは年末の風物詩となっています。
鶏と日本人の歴史
鶏が日本に渡来したのは、弥生時代初期といわれており、『古事記』や『日本書紀』の「天岩戸神話」で登場した「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」が、夜明けを告げる神聖な動物とされたように、時を告げる鳥として大事にされてきました。
その後は、卵をとるだけでなく、食肉として食べる習慣ができていき、鶏同士を戦わせる、闘鶏も行われていました。そして戦国時代にポルトガル人などがくるようになり、カステラなど卵を使用した南蛮菓子が登場します。
江戸時代以降、養鶏が全国に広がり、現在でも卵や鶏肉は日本人に欠かせない食料となっています。
鶏と神様の関係
鶏は、神道において神聖な鳥とされています。特に、伊勢神宮では「神鶏(しんけい)」と呼ばれる鶏が飼育されており、神の使いとして大切に扱われています。
神鶏は、『古事記』や『日本書紀』の「天岩戸神話」で登場した「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」が、夜明けを告げる神聖な動物とされたことから、朝早くに鳴いて天照大御神(あまてらすおおみかみ)に時を告げる役割を担っているとされています。境内を自由に歩き回る姿を、参拝の際に目にする方もいるでしょう。
鶏と仏様の関係
酉年の守り本尊は不動明王とされています。不動明王は大日如来の化身で、明王の最高位にあり、右手の剣で迷いや邪悪な心を断ち切り、左手の綱で悪心をしばり良い心を起こさせる仏様です。
不動明王で有名なものに「日本三不動画」として平安時代から大切にされてきた、京都青蓮院門跡の青不動、高野山別格本山明王院の赤不動、大津三井寺の黄不動があげられます。
酉年にまつわる神社5選
酉年にちなんで、鶏にまつわる神社を5つご紹介します。
石上神宮(いそのかみじんぐう)(奈良県天理市)
石上神宮は、日本最古の神社といわれ、物部氏の総氏神である由緒ある神社です。健康長寿、病気平癒、除災招福、百事成就などのご利益があるといわれています。
境内には、長鳴鳥の一種の東天紅(とうてんこう)と烏骨鶏(うこっけい)など約30羽が生息しており、境内の各所でみることができます。
大鳥大社(おおとりたいしゃ)(大阪府堺市)
全国の大鳥神社の総本社であり、和泉国一ノ宮である大鳥大社。御祭神は日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と大鳥連祖神(オオトリムラジノオヤガミ)で、社殿は「大鳥造」という独特な建築様式をもちます。
日本武尊の魂が白鳥となって飛び立ち、最後に舞い降りたのがこの場所で、社を建ててお祀りしたのが由緒といわれています。
鶏石神社(けいせきじんじゃ・福岡県福岡市)
日本で唯一の「鶏を祀る神社」といわれており「狛鶏」が鎮座しています。
鶏の死を憐れんだ僧侶によって、石になった鶏が祠に祀られたことが起源とされています。
鶏がたまごを産みたまごが孵化するように物事が成就する「修理固成(しゅりこせい)」のご神徳があり、また鶏は夜鳴かないことから、子どもの夜泣きにもご利益があるといわれています。
中野神社(青森県黒石市)
紅葉の名所としても有名な中野神社は、不動明王を祀る神社で、使いとしての鶏がいます。
五の鳥居の手前に一対の狛鶏がおり、「諌鼓鶏(かんこどり)」であると考えられています。諌鼓鶏とは、古代中国において天子に諫言する際に打ち鳴らす太鼓を諫鼓といい、世の中が平穏であることの象徴を表しています。
鷲神社(おおとりじんじゃ・東京都台東区)
「酉の市」起源発祥の地としても有名な浅草にある鷲神社。御祭神は天日鷲命(あめのひわしのみこと)、日本武尊をお祀りしており、「おとりさま」とも呼ばれています。
「酉の市」とは11月の例祭のことで、11月に酉の日が2回ある時は二の酉、3回ある時は三の酉とよばれます。この酉の市は「春を待つ ことのはじめや 酉の市」という句からもわかるように、お正月が近づいている風物詩として昔から今に至るまで、人々に親しまれている行事となっています。
まとめ|鶏や酉年にまつわる神社にお参りにいこう
酉年は、商売繁盛や金運アップの縁起の良い干支として知られ、鶏は古くから日本人と深い関わりを持ち、現在に至ります。
そんな関係の深い鶏に親しみを感じながら、鶏にまつわる神社や酉の市、不動明王にお参りなどをしてみてはいかがでしょうか。