稲わらなどの材料を手で撚って、しめ縄を作る作業を「綯う(なう)」といい、反時計回りに左から綯って作られた縄を「左縄」といいます。
今回はしめ縄で用いられる「左縄」と「右縄」の違い、古来日本から続く「左右」の考え方について解説します。
目次
しめ縄の意味・取り付けられている場所
しめ縄は、神社の鳥居や拝殿だけでなく、さまざまな場所で見ることができます。ここではしめ縄そのものの意味やしめ縄が取り付けられている場所、しめ縄の由来について見ていきましょう。
しめ縄の意味・取り付けられている場所
しめ縄は「神様の住む神聖な空間」と「私たちの住む俗世」を隔てる結界としての役割があります。また神社の周りや大木、巨石などのご神体をしめ縄で囲うことで、その中が神域であることを示したり、厄や禍を祓ったりする意味もあります。
この他にも、神様がここに宿っている「依り代」として印をつける役割や、結界や立ち入り禁止を表す「標」の意味もあり、正月に家の門や出入り口などに飾る「しめ飾り」もしめ縄の一形態と言われています。
一般的な神社では、神様に向かって右方を上位、左方を下位としています。ゆえに神社のしめ縄は、多くが向かって上位の右方が綯い始めで、左方を綯い終わりとする張り方になっています。
しめ縄の由来
しめ縄の起源は古代の日本神話までさかのぼります。太陽の神である天照大神(アマテラスオオミカミ)が弟の素戔嗚尊(スサノヲノミコト)の乱暴を怒って天の岩戸に隠れてしまい、天地が真っ暗になるという「天岩戸隠れ」の話のなかで、岩戸から出てきた天照大神が再び中に入らないように、しめ縄で縛って岩戸の口を塞いだことがしめ縄の始まりとされています。古事記では「尻久米縄(しりくめなわ)」と書かれていました。
しめ縄は「注連縄」や「〆縄」と書かれることもありますが、中国で死者が再び家に入ってこないよう家の入口に水で清めた縄を張っておく風習(=「注連」)があったため、日本にあったしめ縄と中国の風習で使われていた縄から 日本でも「注連」という文字が使われるようになったとも言われています。
「左縄」と「右縄」の違い
縄は通常、わら細工や草履などの日用品に使用する場合は右撚りの「右縄」ですが、神社やお寺でしめ縄として使用する際は、左撚りの「左縄」を使用することが一般的です。
昔の人は日常的に縄を綯うことをしていましたが、それが「右縄」で、「左縄」を作る際は、日常慣れた手作業から一線をひき、神様のお供物として心を整えて綯っていたと考えられています。
縄の綯い方として、最初の状態から太い縄にしていくには、綯い終わった縄同士を合わせて再び綯っていくわけですが、その最後の工程を「左綯い」にすることで、「左縄」ができ上がります。
縄を綯うことは、縄文土器からもわかるように、遅くとも縄文時代には始まっていました。ただし、縄文時代には稲作が伝わっていないので、稲わらではなく草の茎やつるのような植物の素材を使用したと考えられるでしょう。
また、使用するわらは米を収穫した後のわらではなく、青々とした稲を乾燥させたものが良いとされる地域もあります。
古来から続く「左右」の考え方
もともと日本には「左は神聖、右は俗世」とする考え方があります。この左上右下の考え方は、飛鳥時代に遣唐使を通じて中国から伝えられたものとも言われています。
左が上位、右が下位という考え方は、現在のさまざまなところに見られており、神社の手水も左から清め、神楽も左から踏み出します。盆踊りは精霊を迎えるため左回りに踊り、死者の着物は左前に着せるなども左右を意識した例でしょう。
また、京都も左京区が向かって右にあり、京雛は向かって右がお内裏様、左がお雛様と飾りますし、「左近の桜、右近の橘」というのも、昔天皇が住んでいた内裏の紫宸殿から見て左に桜、右に橘が植えられていたので、私たちがお雛様に飾る際には向かって左が橘、右が桜となるというわけです。
この考え方は「天子南面」といって、北を背にして天皇が南を向くと、日が昇る方が東で「左」、日が沈む方が西で「右」ともなり、陰陽道の左を陽、右を陰とする考え方にも繋がります。
出雲大社は左右が逆?
一般的な神社では、神様に向かって右方を上位、左方を下位とするため、しめ縄は上位の右方が綯い始めで、左方を綯い終わりとする張り方になっています。
しかし、出雲大社は古来より他の神社とは反対の張り方をしてきました。実際にご本殿内の客座五神も向かって左から上位の神様が並んでおられ、御供物も向かって左が上位のお供え物とされています。
出雲大社の他にも、伊勢神宮も左右の考え方が逆で、伊勢地方においてはお正月のしめ飾りも、ごぼう締めの向きが他の地域と逆になっています。
しめ縄の種類に関する記事はこちら↓
まとめ〜神社のしめ縄は「左縄」、取り付ける向きにも注意〜
神社のしめ縄は「左縄」が用いられ、一般的に向かって右が綯い始め、左が綯い終わりとなるように取り付けましょう。「左上右下」の考え方は、神社にお参りするときや、神棚にしめ縄を飾る時、しめ飾りを飾る時、お雛様を飾る時など、日常でも役に立ちますので、覚えておくと便利ですね。
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