お正月も近くなると、家の玄関にしめ飾りをつける家は多いですよね。このしめ飾りはなぜ玄関につけるのでしょうか。お正月の意味や歳神様、神社のしめ縄との違いについてご紹介します。意味を深く知って、伝統を楽しみましょう。
しめ飾りを玄関に飾る理由
しめ縄とは神様がいらっしゃる神聖な場所を表すものです。日用品など普段使いするものは右綯いであるのに対して、しめ縄は左撚りで作られています。これは日常のものと神聖なものとを区別するためであり、特別なしめ縄を心を込めて作っていたのでしょう。
しめ縄にも種類があり、そもそも神社のしめ縄とお正月のしめ飾りは別物です。神社のしめ縄は神社にいらっしゃる神様のためのもので、お正月のしめ飾りでお迎えする神様は、歳神様です。
歳神様をお迎えする家であるしめ飾りは、地域によっては玄関だけでなく、水回りや車などにつけることもあります。
しめ飾りと似た役割を持つものは門松です。門松も神様の来られる場所を意味し、迷わずに来ていただけるように置くものです。大昔は、村の入り口に飾っていましたが、次第に各家に飾るようになり、今の形になったといわれています。
歳神様とは?
歳神様は、毎年正月に各家にやってくる神です。地域によってその性格は少しずつ異なり、来訪神や穀物神、祖霊、年徳神などの性格を持ちます。多くの場合、山から来ると考えられていますが、地域によって捉え方やもてなし方が異なります。
穀物のサイクルが1年であることなどから、穀物の神、豊作の神という意味、そして、山に住む祖先の霊が春になると山から降りてきて農耕を見守ってくれる田の神、山の神であるという民間信仰があり、お正月にも降りてくると考えられています。
また、地域によって正月様、恵方様、大年様、トシドンなどさまざまな呼び方があります。
しめ飾りの縁起物の意味
しめ飾りにはさまざまな飾りがついています。これは歳神様をお迎えするおめでたい気持ちと、食糧に困らないようにとの祈願を表していると考えられています。
しめ飾りの縁起物は多種多様で、地域によって特色があります。代表的な飾りには「裏白」「橙」「譲り葉」「紙垂」があり、裏白には清廉潔白や長寿、橙には代々栄えること、ゆずり葉は子孫代々受け継がれていくこと、紙垂はよくないものを遠ざける神聖さをそれぞれ表しています。
この他にも、扇や海老、鶴亀、稲穂、椿、南天、水引き、松ぼっくり、炭(沖縄県)などがつけられます。一般的に、関西地方や東海地方はシンプルなものが多いといわれており、しめ飾りの形も、輪飾りやごぼう締めなど地域によってバラエティ豊かです。
お正月のしめ飾りを飾るタイミング
お正月のしめ飾りは、一般的には、12月13日の正月事始め以降に飾り、松の内が終わると取り外します。松の内とは、歳神様が滞在される期間をいい、正月事始めから関東地方では1/7、関西地方では1/15までとする場合が一般的です。
なかには1年中飾る地域も存在します。
伊勢・志摩地方では「蘇民将来子孫家門」などの文字が書かれたしめ飾りがみられ、1年中玄関に飾られています。
この地方には古くから以下のような言い伝えがあります。
須佐之男命(スサノオノミコト)が伊勢を旅した際に、泊まるところがなく困っていたところ「蘇民将来」という人物が貧しいながらも家に泊め、もてなしました。
須佐之男命はこれを喜び、恩として「蘇民将来の子孫と書いて、茅の輪を門口にかけておけば子孫代々病を免れる」または「疫病を逃れるために、茅の輪を腰につけなさい」
と言い残します。
そのおかげで、のちに疫病が集落を襲った際に、蘇民将来の子孫だけが助かったという話です。
他にも天草下島の大部分でも、1年中しめ飾りを飾っている地域があるといいます。これはキリスト教禁教下で、キリシタンだと疑われないように、神道で使うしめ縄を1年中飾っていたという風習の名残りだそうです。
まとめ〜お正月の意味を知って、しめ飾りの伝統文化を楽しもう〜
お正月のしめ飾りは神社のしめ飾りとは違い、歳神様を迎えるものです。地域によっても特色があり、縁起物の種類も違えば、形も違い、なかには1年中飾っている地域もあります。しめ飾りを通して、地域の特色を学びながら、お正月という文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。