しめ縄についているヒラヒラした白い紙は「紙垂(しで)」といい、しめ縄だけでなく、御幣や玉串にも使われています。この記事では、紙垂の意味や由来、しめ縄への付け方、御幣、玉串について説明します。紙垂について詳しくなれば、参拝などの際に見る目が変わりますよ。
紙垂とは
紙垂(しで)とは、しめ縄につけて垂らす、特殊な裁ち方をして折った紙のことで、「四出」「垂」「四手」と書く場合もあります。
現在、紙垂には3種類の裁ち方があり、それぞれ「吉田流」「白川流」「伊勢流」と呼ばれます。裁ち方や数などは地域や神社によって異なるため、見比べてみるとおもしろいですね。
また、紙垂は現在では奉書紙や美濃紙、半紙などの紙で作成しますが、かつては麻や木綿(ゆう)といった布が用いられていました。
しめ縄のほかには御幣や玉串にも使われており、さらに神社以外では、家庭の神棚やお正月飾り、大相撲の横綱土俵入りの際にもみられます。
紙垂の意味や由来
しめ縄についている紙垂は「神聖」や「清浄」を表します。また、しめ縄を雲、紙垂を稲妻、しめの子(しめ縄から垂れている細いわらなど)を雨として、豊かなみのりを表したり、稲妻の力で悪いものを寄せ付けないという意味もあるのです。
しめ縄には、神様のいる場所と私たちの住む場所を隔てたり、神様のいる場所を示したりする意味がありますが、紙垂によって神様のいる場所の清浄さや神聖さをより表しているのですね。
紙垂の由来もしめ縄と同じ「天岩戸神話」にあります。天照大神が素戔嗚尊の乱暴狼藉に困り、天岩戸に隠れてしまったため、世界は闇に包まれ災いが起こるようになりました。そこで神々があの手この手で天照大神を天岩戸から誘い出そうとする際に、榊の枝に木綿の布と麻の布を垂らしたと言われています。
しめ縄への紙垂の付け方や向き
しめ縄に紙垂をつける際は、しめ縄の縄目に差し込んでつけます。気をつけたいのはその向きで、神様のいる神聖な場所に不浄なものが入っていかないようにするため、神様側が裏でこちら側が表になるようにつけましょう。
紙垂の数は、神棚には4つ垂らすのが一般的(四垂)ですが、地域によって二垂、八垂など違いがあります。
また、紙垂を手作りする際には、作業を始める前に身を清めてから行います。神社などでは白衣を着て作りますが、一般の家庭では普段着でもよく、神社にお参りするときのように、手を洗い、口をすすいでから落ち着いた気持ちで行いましょう。
紙垂と御幣
以上のようにしめ縄につけられている紙垂ですが、紙垂はしめ縄のほかに、御幣や玉串にも使用されています。しめ縄の紙垂の意味と御幣や玉串の紙垂の意味は若干違ってきますので、違いをみていきましょう。
御幣とは
御幣とは、神様への捧げ物、お供え物を表し「幣」は貴重な品を意味しますが、神社によっては神様そのものを表し、御幣自体がご神体になったり、祭祀の際に依代となる場合もあります。神棚や神社の奥に祀られている、2本の紙垂を竹や木で挟んだものが一般的なかたちです。
御幣の用途は2通りあり、ご神体を意味する場合は神社の奥に祀られ、お祓いのときに神主がふる場合は、周囲の穢れを取り除く目的で使用されます。
地域によっては、神棚や台所、お手洗いに飾って家内安全を祈ることもあります。
御幣の由来
御幣の由来は、幣挿木(へいはさむき)であり、これにはさんで垂らした麻や木綿(ゆう)が紙垂のルーツとなります。木綿や麻は幣挿木が神様への捧げ物だと示すためにつけられていました。
幣挿木に折りたたんだ布をはさんで捧げる形式が登場したのは中世以前の頃から。そして江戸時代からは紙へと変化していきました。紙といっても当時は貴重な品で、神様に捧げるのに相応しいと考えられていたのです。
室町時代から江戸時代にかけて、榊(玉串)のほかに、御幣を神前にささげる形が普及・定着化し、木綿や麻をさいたもののように細かった紙垂は徐々に太く大きくなっていきました。
紙垂と玉串
玉串とは神事に用いられる植物を意味し、神前にお供えする榊の枝のことをいいます。榊に紙垂をつけることで神様にお供えする玉串になるのです。
玉串は、神前にお供えするものとして、米・酒・魚・野菜・果物・塩・水などの神饌と同様の意味があると考えられています。神饌との違いは、玉串拝礼といって、神事において参拝者や神職が神前に捧げることです。
玉串は天岩戸隠れの際に、神々がおこなったまつりで真榊に玉や鏡などをかけたことに由来し、祀られる神と祀る人との仲立ちの役割もあります。
まとめ〜紙垂の意味を知り、こころを込めてお参りしよう〜
紙垂は、しめ縄につける際には清浄や神聖、稲妻を表しますが、御幣や玉串の場合はご神体や御供物の意味がありました。紙垂の用途や意味は意外と多様なので、紙垂を見つけたら意味を考えるとおもしろいかもしれませんね。また、意味がわかるとより一層心を込めてお参りできそうな気がしませんか。