伝統工芸とは長年にわたり受け継がれている技術や技が用いられた美術や工芸のことで、その技術を用いて作られた工芸品を伝統工芸品と呼びます。
この記事では、伝統工芸品の特徴や魅力、抱えている問題点を示し、伝統工芸品としてのしめ縄をご紹介します。
伝統工芸品とは
長年にわたり受け継がれている技術を用いて作られた工芸品を伝統工芸品と呼びますが、「伝統的工芸品」と「伝統工芸品」があり、定義や特徴などに違いがあります。以下で詳しく説明します。
伝統工芸品の特徴
伝統工芸品には「伝統的工芸品」と「伝統工芸品」があります。
経済産業大臣が指定するのが「伝統的工芸品」です。補助金制度などがありますが、審査が厳しいのが特徴です。
伝統的工芸品の要件として「日常生活に使われるものである、工程のほとんどが手作業である、伝統的で高度な技術により製造、伝統的に使用されてきた原材料を用いる、一定の地域で少なくない者がその製造を行っている」が挙げられています。
伝統的という定義に明確な決まりはありませんが、100年以上続いているという解釈がなされているため、断絶してまた復活した「薩摩切子」は、国の指定にはなっていないのです。
一方の「伝統工芸品」は、各自治体で国よりはゆるやかな独自の基準が設けられている場合が多く、地域の特色ある工芸品は指定されています。
伝統的工芸品の種類とおもな工芸品
現在、「伝統的工芸品」は240品目あり、主に15種類に分類されます。
伝統的工芸品の種類は、織物、染色品、陶磁器、漆器、木工品、竹工品、金工品、石工品、仏壇仏具、文具、人形、和紙などです。
有名な伝統的工芸品として、京都府の西陣織、石川県の輪島塗、東京都の江戸切子、佐賀県の有田焼、秋田県の大館曲げわっぱなどがあります。
伝統工芸品はいつからある
伝統工芸品は人類が道具を作り始めた約1万年前ころから、はじまったといえます。
それが暮らしのなかで発展し、海外から伝わった技術などと融合して受け継がれてきました。
戦後になり日本人のライフスタイルが変わり、長年受け継がれてきた伝統工芸の生産量が減り、後継者も減りつつあったため、1974年に伝統的工芸品を守るための法律ができたのです。
伝統工芸品の魅力と問題点
伝統工芸品には他にはない魅力がありますが、一方で大きな問題も抱えています。
伝統工芸品の魅力
伝統工芸品の魅力は、職人の技の素晴らしさや見た目の美しさだけではありません。
伝統工芸品に触れることで、日本の文化や歴史が感じられるのはもちろん、もともと生活の中で使われてきたものなので、当時の生活を感じられます。
また、手作業で作られるため、ひとつとして同じものはなく、使うほどに味がでて魅力がでますし、壊れても修復して使い続けることができます。
伝統工芸が抱える問題と今後
魅力がたくさんある伝統工芸品ですが、多くの問題も抱えています。
高額であり敷居が高いというイメージがあり、大量生産は不可能で希少なため触れる機会が少ないことから、話題になりにくく関心を持つ人が少ないことがあります。
また、最も深刻な問題は後継者不足です。地域の過疎化や少子高齢化、伝統工芸で生計を立てることの難しさによるところが大きいのです。さらに原材料の調達が難しくなっている点も懸念されています。
ただ、SNSの普及により、伝統工芸品を世の中に発信しやすくなったことは追い風でもあります。現代的なものとコラボして新しい魅力を生み出した伝統工芸品もありますし、大量生産・大量消費社会が見直され、高額でも特別なものを求める人も増えていることも希望といえるでしょう。
伝統工芸品としてのしめ縄
しめ縄は「伝統的工芸品」として国から指定されているものはありませんが、「伝統工芸品」として自治体から指定を受けているものはあります。
ここでは、伝統工芸品のしめ縄とその特徴をご紹介します。
愛知県岡崎市の「大門のしめ縄」
出典 岡崎匠の会
大門地区のしめ縄づくりは、明治20年代に伊勢神宮周辺のしめ縄づくりの技術を持ち帰ったのがはじまりとされている、130年以上の歴史がある伝統工芸です。
東海千本・古代米という品種の稲を使った、鮮やかな青い色が特徴です。
宮崎県「高千穂郷しめ縄・わら細工」
出典 わら細工たくぼ
高千穂郷しめ縄・わら細工は、西臼杵地域で作られるしめ縄や縁起物のわら細工、生活用品のことで、「綯う(なう)」技術が用いられています。
島根県「飯南のしめ縄」
出典 大しめ縄創作館
島根県飯南町では古くからしめ縄作りがさかんで、昭和30年代からは出雲大社の大しめ縄を製作・奉納しています。しめ縄の材料である稲わらはすべて県内産のものが使われています。
「飯南のしめ縄」の技術は「大しめなわ創作館」で間近でみることができます。この施設では、しめ縄の制作工房の見学や資料の展示、しめ縄作り体験コーナーがあり、伝統の技を学ぶことができます。
まとめ〜伝統工芸に関心をもち守り伝えよう〜
しめ縄は伝統的工芸品ではないものの、自治体の伝統工芸品に指定されている例もあるように、伝統的で貴重な技術がつまった工芸品です。他のさまざまな伝統工芸品と同じように、その技術を守り伝えていきたいものですね。